響く風車の野太い重低音 進む風力発電で道北は〝陣取り合戦〟激化、環境への影響懸念も
■バードストライクも課題
経済産業省が3年前に発表した第6次エネルギー基本計画では、2030(令和12)年の温室効果ガス46%削減=13(平成25)年比=に向け、陸上風力は17・9ギガワット、洋上風力は5・7ギガワットなど再生可能エネルギーを拡大する方針が掲げられている。電源構成も09(平成21)年度時点の20%から、30年度は36~38%と倍近くまで引き上げる意向。太陽光よりも安定した商用電源が得られる風力発電への期待は大きい。
ユーラスHDは風力発電のメリットとして、温暖化の要因の一つとされる二酸化炭素(CO2)の排出ゼロ▽高い設備利用率▽エネルギー自給率向上に寄与▽夜間稼働が可能―を挙げる。
一方、デメリットは風向きや風力の変化で発電量が安定しにくいことや、定期メンテナンスにコストがかかることなどがあるという。騒音や低周波音の問題もあり、同社は「一定程度の配慮が必要」としている。
道北地方は渡り鳥の中継地となる湿地などが点在し、鳥が人工物に衝突する「バードストライク」も課題だ。環境省が5月に発表した国内希少動植物の傷病個体の収容結果によると、令和5年度は8羽のオジロワシが回収されている。データが残る平成12年度以降では令和元年度に並ぶ過去最多タイという数字だ。
■エリア内には絶滅危惧種も
自然などへの影響について同社は「事前調査に基づく予測と結果を地元自治体、環境省と経産省の専門家に提示。勧告内容に沿って事業を進める」と語る。
同社は稚内市などで新たに100万キロワットの風力発電所新設を計画中。建設エリア内の猿払川水系には絶滅危惧種の淡水魚「イトウ」が生息しているとして、地元有志らが河川への土砂流入による影響を懸念して中止を求めている。
限りある風況適地は事業者による「陣取り合戦」の様相を呈しており、地元からは「環境影響調査が十分ではない」「懸念がある以上、計画中止を」などの声が上がる。