響く風車の野太い重低音 進む風力発電で道北は〝陣取り合戦〟激化、環境への影響懸念も
日本最北端のまち、北海道稚内市を含む道北エリアで近年、陸上風力発電所の計画や営業運転が相次いでいる。生成AI(人工知能)の急速な普及やデータセンターの拡大などに伴う電力需要の増加を背景に、国内随一とされる風況の良さから進出が加速しているのだ。5月下旬には国内最大の風力発電会社「ユーラスエナジーホールディングス」(ユーラスHD)が出資する「道北風力」による大型風力発電所2施設の竣工(しゅんこう)式も行われた。その報道公開に合わせて風発現場を取材した。 【写真】全長30メートルを超える羽根を載せた大型特殊トラック ■172基が回る〝風車銀座〟 稚内市の隣町、豊富(とよとみ)町で今年1月、芦川ウインドファーム(WF)北側区画の営業運転が始まった。羽根部分を含めて142メートルの高さがある風車が宗谷地方の丘陵地に16基並び、6万8800キロワットの電力を生み出している。 稚内市内から大型バスで同WFへ。曇り空にあっても車窓から羽根が回る様子がよく見える。それだけ風車の存在感は大きい。開発工事で整備された未舗装路を抜け、風車が立つ現地に到着すると、辺り一帯には野太い重低音が響いていた。当日は暴風警報が発令されるほどの強風で「風車の回転速度は上限いっぱい」(広報担当者)。最大出力で回転する羽根を見上げながら風況の良さを実感するが、点在する風車の多さにも圧倒される。 このWFは来年春に南側区域(風車15基・6万キロワット)の営業運転が始まる予定。南北両区画12万8800キロワットのフル出力は道北地方でも大きい。 道北地方では稚内市の風車数が最も多い。市の集計によると、営業運転を始めた風力発電所は12カ所で、風車の数は172基(48万7830キロワット)を数える。建設中の2カ所(13万2200キロワット)と、環境影響評価(アセスメント)中の8カ所(186万9300キロワット)を含めると、全体で248万9330キロワットとなり、国内最大の風力発電エリアとなる見通し。 稚内市と豊富町を結ぶ道路を走ると大小さまざまな風車が視界に入り〝風車銀座〟を実感する。その数がさらに増えるのは既定路線だ。