「逃げ上手の若君」アニメ化 ゆかりの諏訪も盛り上げへ
諏訪頼重が主人公を救う
鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて活躍した武将北条時行と、諏訪地域を治めて行動を共にした諏訪頼重など信濃を拠点に実在した人物らを描いたアニメ番組「逃げ上手の若君」が7月から、信越放送(長野市)で放送される。原作者の漫画家が諏訪地域を取材した際に協力した関係者は、当時の信濃について理解が深まると期待している。 【写真】単行本に「諏訪」の解説 漫画家松井優征さんの原作は「週刊少年ジャンプ」(集英社)で2021年から連載。鎌倉幕府滅亡時、最後の執権の遺児北条時行は、家臣で諏訪大社の当主諏訪頼重に救い出され、動乱の時代を歩み始めるという筋立てだ。信濃国守護の小笠原氏や、諏訪明神を信仰する信濃各地の武士団「諏訪神党」の海野氏、祢津氏、望月氏、保科氏などが登場。諏訪や川中島といった信州の地で躍動する。 諏訪地域の歴史や信仰などを研究する団体「スワニミズム」事務局長の石埜三千穂(いしのみちほ)さん(59)=下諏訪町=は、松井さんが連載開始前に諏訪地域を訪れて取材した際、案内役を務めた。単行本の巻末では歴史の専門家が時代背景などを解説しており、石埜さんも一部を執筆している。 原作は今年1月に第69回小学館漫画賞に選出。「鬼滅の刃」などで知られるアニプレックス(東京)などでつくる製作委員会がアニメ化した。信越放送によると、第1話は木曜枠として7月12日午前1時42分から放送。1話30分で週1回、計12話を予定している。 「南北朝時代の信濃は、複雑で分かりづらいせいか、戦国時代などと比べるとこれまで注目を集めにくかった」と石埜さん。アニメがテレビ放映されることに「県内のゆかりの史跡や文化財が知られ、保護や活用に向けた機運が高まればいい」と期待する。 諏訪地域では、地域の盛り上げへ生かそうとする動きも出ている。諏訪商工会議所は「アニメ化をきっかけにファンに訪れてもらい、諏訪の魅力を知るきっかけになってほしい」としており、青年部や観光関連部会では現在、アニメと連携した取り組みを検討しているという。 【北条時行】 鎌倉幕府執権北条氏の最後の当主、北条高時の遺児。先代の武家の筆頭である高時と、室町幕府を創始した武家の棟梁(とうりょう)、足利尊氏との中間の存在として中先代(なかせんだい)とも呼ばれる。1335年、北条氏復興を目指して諏訪頼重と信濃で挙兵し、一時鎌倉を奪還した(中先代の乱)。その後も鎌倉奪還に執念を燃やした。南北朝の内乱では、南朝方の武将として戦った。「逃げ上手の若君」では主人公として描かれている。