こんな雰囲気で道長の「望月の歌」が詠まれるなんて… 「光る君へ」視聴者の解釈もさまざま
下敷きにした紫式部の歌
水野:以前、まひろが詠んだ歌と、道長の「望月の歌」は関係があるのでしょうか? たらればさん:はい。後一条天皇が生まれた時(道長が「望月の歌」を詠む約10年前)に祝いの席で紫式部が詠んだとされる、こちらの歌ですね。 「めずらしき光さしそう盃は もちながらこそ千代もめぐらめ」 たらればさん訳/新たに加わった若宮(敦成親王=後一条帝)へ捧げるこの栄光の盃(栄月)は、望月(満月)同様、永遠に輝き続けることでしょう。(紫式部集86歌) 水野:ドラマでも道長が「よい歌だ、覚えておこう」と返していましたよね。 たらればさん:道長が「望月の歌」を詠むときに「この歌を参考にしたんだろうな」という研究もある歌です。 水野:そう考えると、ドラマでは「まひろの歌を、俺は今も覚えているぞ」というメッセージもあったのかな……と思えてきました。 今回の放送回では、摂政を頼通に継がせようとした道長から「俺の思いなんか(息子に)伝えてもむなしいだけだ」ということを言われたまひろが、「次の代、次の代と、一人でなせなかったことも、時を経ればなせるやもしれません」と答えたところが泣けました。 1000年後、私たちに『源氏物語』が届いて、この物語で一喜一憂していることを考えるとすごく胸にくるなと思いました。 人や権力には終わりもあるけれど、それは次の人に継がれていって、バトンタッチしていく……月も欠けることもあるかもしれないけど、時を経ればまた満月になる…みたいな話なのかなぁと感じていました。 たらればさん:この時点では盤石だった道長ですが、今後はそれがうまくいかなくなっていくんですよね。 この歌を詠んだ時点では道長はまだまだ権力者なので、「次の代とか言ってないで自分でやれよ」って言いたくなります。彼はこのあとも10年生きますし、「最高権力者なんだから人任せにするな」「おまえが始めた物語だろうが!」と思わず突っ込んでしまいました(笑)。 水野:それはたしかに!!(笑)