処理費が約8000万円だった「淀川のクジラ」、今は名古屋に…世間の関心を集めた淀ちゃんの現在。
第2章 海と生き物のつながり
そもそも、地球になぜ海が存在するのかを理解するためには、地球における水の起源を解明しなくてはなりません。地球の水の起源物質は、小惑星「リュウグウ」から得られた試料の分析から多くの新知見が得られつつあります。 本章では、始原的隕石から太陽系惑星に至る水の起源、地球史における海の誕生と進化、そこで育まれた現在の私たちにつながる初期生命の生態系について最新の研究成果と標本を使って紹介します。 日本列島周辺の海は、現在の地球の海を特徴づける要素が、ほぼ全て揃っていると言われています。プレートの沈み込みに伴う海溝沿いの超深海から非常に活動的な火山列島などの沿岸域まで、多様な地形で構成されているためです。そして、そこを流れる世界最大規模の海流である黒潮は、単に海水の移動にとどまらず、エネルギーを輸送し、日本周辺の気候に影響を与え、陸上を含めた多様な生物を育んでいます。 本章では、日本列島周辺の海底を形作るプレート運動や火山活動などの活動的な地学現象、黒潮を含む海流が生み出す大規模な海洋循環を解説し、それらが生物の分布や多様性にどれほど影響し、大きな広がりが生まれているのかを紹介します。
TOPIC “迷いクジラ”の歯からわかること
2023年1月、大阪湾の淀川河口付近にマッコウクジラ(オス、体長1469cm)が迷い込み、死亡後、海に沈められた一連の出来事は世間の大きな関心を集めました。国立科学博物館を含む調査チームは学術調査を実施し、このマッコウクジラから歯や胃内容物、寄生虫などの標本や研究資料を採取しました。本展では、この個体の歯と胃内容物を展示します。歯を含む標本や研究資料から得られた研究成果により彼らの「今」を紹介します。
第3章 海からのめぐみ
人類史における海とヒトの関わりは食料や貝殻を装飾品などとして利用することから始まりました。やがて外洋航海技術を発展させると、海を渡って新たな大陸や島嶼への移住を実現させました。特に島嶼では、多様かつ豊富な海産資源を利用する文化が生み出され、ヒトは海とより深く関わるようになりました。 現代では、海からのめぐみはさらに大きなものになっています。海運物流なしにはもはや人類の生活は成り立たちません。さらに人類は、北極海の活用や深海にある鉱物資源の回収まで見据えています。本章では、水産資源の利用にとどまらない様々な「海からのめぐみ」について人類史を通じて紹介します。