ガザで「光」を見たイラク人10年ぶりの救出劇、ユダヤ教「ハヌカ」で振り返る苦難の物語
■5回の人身売買に遭いながらも… 何度も人身売買にかけられ、5回目に買った男がガザ出身のパレスチナ人でIS戦闘員だった。10歳年上だった。性奴隷として薬物を飲まされ、何度もレイプされた。ファウジアさんは息子と娘を出産した。 2018年、ISがシリアの主要部から追放された際、彼女を買ったパレスチナ人の“夫”はシリアのイドリブ刑務所に収監された。ファウジアさんは、シリア北東部の砂漠地帯にあるアルハウル難民キャンプに送られた。
その後、偽造パスポートでトルコやエジプトを経由し、2020年ガザに連行された。“夫”の家族と住むためだった。しかし彼女は家族からも暴行を受け、家に監禁された。 「私には自由がまったくありませんでした。もし自由だったら、もっと早くガザから出ていたでしょう。けれどもできなかった。私はつねに彼らの監視下にありました」 そんな彼女に転機が訪れた。2023年10月に勃発したハマス・イスラエル戦争で、イスラエルがガザに地上侵攻して間もなく、彼女を監禁していた家族はいなくなった。戦闘員として戦死したのか、逃亡したのか、詳細は不明である。
ガザは戦場と化していたので、自分で動き回るのは危険だった。彼女は安全と思われる場所に避難し、助けを求める動画をTikTokへ投稿した。ヒジャブをかぶり、顔の一部を泣き絵文字で隠していた。 「助けてください。私をこの場所から出してください」 2024年6月、この動画がヤズィディの救出活動をしている人物に届いた。しかし、戦時下の救出は困難だった。イスラエルの協力なしには不可能だが、協力を求めたところで「今それどころではない」と一蹴されるかも知れない。
■イスラエルにアメリカとイラクが協力 しかしイスラエルは協力要請を受け入れた。どのように救出するのか、救出した後はどこに向かうのか、綿密に計画を立てる必要があった。イスラエル国防軍(IDF)にアメリカとイラクが協力する形で、3カ月かけて極秘の任務が進められた。協力者の中にはイスラエル人ジャーナリストや実業家もいた。 2024年10月1日、ついにその時がやって来た。ガザ地区南部のケレム・シャローム検問所を通過したファウジアさんは、用意された車両に乗り込んだ。彼女の頭上には無事を見届けるドローンが飛ばされていた。