ガザで「光」を見たイラク人10年ぶりの救出劇、ユダヤ教「ハヌカ」で振り返る苦難の物語
あなたの聖なる御腕を現し、救いを近づけ給え 邪悪な民族に対して、あなたの僕の仇を討ち給え 時は長く、邪悪な日々に終わりが来ないからだ 死の陰の中で敵を打ち倒し、7名の牧者を起こし給え ■ガザから救出されたヤズィディ教の女性 ハヌカ祭は「光の祭典」とも呼ばれる。現代も繰り返されるユダヤ人への迫害に対し、神の光を照らして邪悪な闇を駆逐してくださいと祈るのである。 ここに1つの事件を紹介したい。2024年10月初旬、ガザから1人の女性が救出された。名前はファウジア・アミン・シドさん、21歳。イラクのシンジャール地方に住んでいた女性である。なぜイラク人がパレスチナのガザで「救出」されたのか。
イスラエルの複数メディアが報じ、イギリスの日刊紙『The Sun』が当人のインタビューを踏まえ、詳細を報じた。 ファウジアさんはヤズィディ教徒だった。ヤズィディとは、イラク北部に住むクルド系の民族宗教である。彼らを“邪教”と見なすIS(イスラム国)は2014年8月、シンジャール地方を襲撃し、5000人以上の男性を虐殺し、1万人以上の女性や子どもを奴隷として連れ去った。 11歳のファウジアさんはそのときISに誘拐された1人だった。2人の弟は少年兵としての訓練を受けるため、収容所に送られた。
ファウジアさんたちはその後、イラク北西部のタル・アファルという都市に連行された。4日間、ほとんど何も口にしていない中、IS戦闘員が米と肉料理を持ってきた。食べると気分が悪くなり、全員が腹痛を訴えた。 すると戦闘員は斬首した赤ちゃんや子どもの写真を見せ、「今お前たちが食べたのは、これだ」と告げた。それを聞いた女性の1人は、心臓発作で亡くなったという。 翌2015年初頭、シリアの都市ラッカに連れて行かれた。そこでは拉致された200人と共に、劣悪な環境下で9カ月間監禁された。その間、一度も太陽の光を見ることなく、不衛生な水を飲んで飢えをしのいだ。そこで亡くなった人も多くいた。