守田英正の同僚・スポルティングのギェケレシュがスゴい 長身の北欧FWは現代サッカーでなぜ活躍?
西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 第20回 ヴィクトル・ギェケレシュ 日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。今回は、守田英正も所属するスポルティングで点を取りまくっているFWヴィクトル・ギェケレシュ。長身を生かした強烈なプレーぶりを紹介するとともに、北欧のストライカーたちが今、欧州で活躍している理由に迫った。 【画像】2024-25シーズン欧州サッカー注目16クラブのフォーメーション 【187㎝のドリブラー】 スポルティングのエースストライカー、ヴィクトル・ギェケルシュはリーグ9試合ですでに12ゴール。昨季は公式戦50試合43ゴールだった。スポルティングへ移籍したばかりのシーズンだったが、シーズン後の夏にはアーセナルなどビッグクラブへの移籍が噂されていた。 ハンガリー系スウェーデン人、26歳。187㎝の長身で北欧出身ということもあり、ポストワークが得意なタイプを想像するかもしれない。ギェケレシュはそれもできるが、本領はドリブルである。 チャンピオンズリーグ第3節のシュトルム・グラーツ戦では53分にチームの2点目をゲット。ギェケレシュは中央から左へ流れながら縦パスを受け、背後にぴたりとついてきたDFのチャージを背中で受け止めて逆にはじき返し、その反動を使って縦へ抜け出す。さらにDFの追走コースをカットインで遮り、ゴール前でもGKをかわしてシュート。カウンターからひとりでフィールドの半分を走りきってのゴールだった。 これまでもこの手の得点を数多くあげている。瞬間的なスプリント力とキレ、コンタクトの強さがあり、長い疾走後も息切れしない。 とくにフェイントも使わず、シンプルに持ち出す速さで勝負するタイプ。その際も足下からボールが大きく離れることはない。体格は全然違うけれども、リオネル・メッシ的なシンプルでエネルギッシュなドリブル。とにかく瞬間的な出力が大きいのが特徴だ。 面前の相手をかわして前進するスピードがあるだけでなく、それ以上に相手を背負った時に強みを発揮している。普通はDFが背中に貼りついたら前進は諦めてサポートについた味方へつなぐものだが、ギェケレシュは素早い反転で背後のDFをはがして前進していける。最前線のセンターフォワード(CF)ということもあり、味方のサポートが遅れるケースは多々あるだけに、サポートを待たずに一気に突破していけるのは強みだ。孤立していることが逆に強みになるCFだ。 日本では、柏レイソルの細谷真大が似ていて、DFを背負った状態から引きはがせる。これができるCFはそう多くはない。爆発的なスプリント能力と、体の強さを併せ持っていないと成立しにくいプレーである。