「お金を返して...」脱毛サロン「アリシアクリニック」が巨額倒産 9万2000人が泣き寝入りか
債権者約9万2000人、負債総額約124億円というケタ外れの消費者被害を伴う美容サロンの倒産が起こった。 帝国データバンクが2024年12月10日に発表した倒産リポートによると、全身医療脱毛・レーザー脱毛をうたう「アリシアクリニック」を運営する医療法人社団美実会(さいたま市大宮区、理事長家老仁郎氏)と、関連法人の一般社団法人八桜会(東京都豊島区、同代表理事)は、12月10日に東京地裁へ自己破産を申請、同日破産手続き開始決定を受けた。 翌11日、各地の「アリシアクリニックの店舗には返金を求める若者の姿が見られた。 ■社会保険料滞納の差し押さえがトドメに 帝国データバンクによると、2社合わせて債権者は計9万1818人、負債総額は約124億7133万円に達し、過去最大規模の消費者被害となりそうだ。破産管財人の発表によると、施術を受けていない利用者の前払い金の返金は「極めて難しい状況」だという。 美実会の「アリシアクリニック」と八桜会の「じぶんクリニック」は40数店舗を全国に展開。有名俳優を起用したテレビ広告などで業績を伸ばし、ピーク時の2021年4月期には年収入高約163億1500万円を計上していた。 もともと両社とも2023年12月に破産、10万人の債権者を出したとされる美容脱毛サロン「銀座カラー」を運営していたエム・シーネットワークスジャパンのグループ法人として事業展開していた。 ところが、「銀座カラー」が破産すると、その影響を受けて経営が悪化。その後、一時的に資金繰りが改善したが、12月初旬、社会保険料の滞納による差し押さえ予告が来て、事業継続を断念した。
低価格競争に加え、新規参入相次ぐ脱毛サロン業界
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の担当者に話を聞いた。 ――これほど巨額の負債と、多くの消費者被害を出した「アリシアクリニック」の破産の原因はズバリ、何でしょうか。 担当者 「銀座カラー」の倒産も大きいです。同じグループ企業としてやっていましたから影響をもろに受けました。コロナ禍の中の自粛要請が続き客足が減ったことも影響しています。 「銀座カラー」の倒産は、脱毛業界の競争が激化したことも響いています。低価格競争に加え、新規参入が相次ぎました。「銀座カラー」の倒産後、「アリシアクリニック」と「じぶんクリニック」は経営が厳しくなりましたが、資金調達を行って一時的に資金繰りが持ち直しました。ですが、さらなる資金繰りの改善のために、「アリシアクリニック」と「じぶんクリニック」と統合したことが裏目に出た形です。 ――どういうことですか。 担当者 脱毛サロンでは莫大な広告宣伝費を投入します。そこで、「じぶんクリニック」の屋号を「アリシアクリニック」に変更しました。同じ名前にすれば、広告宣伝費が削減できるという狙いでしたが、これが逆効果でした。 これまでアフィリエイト経由で「アリシアクリニック」と「じぶんクリニック」がそれぞれ顧客を獲得していたのに、「じぶんクリニック」の顧客が蒸発してしまったのです。2社トータルでは新規顧客が減ってしまったわけです。 そこに社会保険料滞納の差し押さえ予告がきました。預金口座を押さえられると会社のお金を動かせず、事業が続かなくなります。