「異常気象」と憲法改正―自民党総裁選三選の安倍首相に求めたい新理念
20日に投開票が行われた自民党総裁選では、多くの国会議員票をまとめた安倍晋三首相が石破茂・元幹事長を破り、三選を決めました。任期は2021年9月までの3年間。2度目の首相就任は自民党が政権与党に復帰した2012年12月ですから、このままいけば約9年間の長期政権ということになります。いよいよ、これまで何度も意欲を示してきた憲法改正に取り組むことも予想されています。 文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、憲法改正自体は「あってしかるべき」としながらも、平和と経済成長の象徴でもあった憲法を変えるには新しい理念が必要と考えます。地球環境の悪化が叫ばれる中、日本が憲法改正を通じて世界に示すべき姿勢はいったいどのようなものなのでしょうか。若山氏が論じます。
理念が必要な憲法改正
自民党の総裁選は、思いのほか石破氏が健闘し、地方票の多くを獲得したが、結果は大方の予想を裏切るものではなかった。 この連載の前々回、三選前の政権を「安倍・菅政権」と表現し、その強さはネット社会の「個室の大衆」が形成する「ホンネの世論=世界的な潮流としての自国主義」に支えられていると書いた。今回は再選後最大の政治課題とされる憲法改正について考えてみたい。果たして自国主義のホンネだけで突き進んでいいのだろうか。憲法となると、タテマエといわれても、何らかの「理念」が求められるのではないか。 若いとき、途上国に行くと「日本はわれわれのモデルだ」という声をよく聞いた。「アジアの端の小さな島国が、いち早く近代化を達成し、性能の高い工業製品をつくって、国民は豊かな生活を送っている」という評価だ。場合によっては戦後経済成長が平和憲法と結びつけて語られた。 憲法改正は、こうした評価を変えることにつながり、「日本は平和の看板をおろすのか」という印象を持たれることになる。改正自体はあってしかるべきことであり、「自衛隊は違憲ではない」という条項を加えることも理解できるが、内外に与えるこの印象も考慮しなくてはならない。 この改正に、第二次大戦後のモデルとしての平和経済国家像に代わる、新しいモデルの国家像を盛り込むことはできないだろうか。