「異常気象」と憲法改正―自民党総裁選三選の安倍首相に求めたい新理念
大西洋の理念から太平洋の理念へ
とはいえ希望を捨てるべきではない。 もっとも排出量が大きいのはアメリカと中国である。この二国が動く必要があるが、もっとも動きたがらない二国でもある。間にある日本は、この両国にアプローチできないだろうか。 もちろん現状の政治状況では不可能に近いが、この際、政治問題は棚上げにして、純粋な専門家レベルで日本、アメリカ、中国の科学者と技術者による総合検討チームを発足させるのだ。この「対立の世紀」といわれる時期に、あえて「協調の道」を探るのである。時代は常に揺れ動いている。最初の一歩が重要だ。 排出権取引が導入された京都議定書(採択1997年、発効2005年)は画期的ではあったが、先進国と途上国の対立もあり、アメリカと中国が参加しなかったため、現実的有効性に疑問があった。パリ協定(採択2015年、発効2016年)では一歩前進したが、トランプ大統領になったアメリカが抜け、まだ足並みがそろわない。こういった多国間の政治的解決も重要だが、科学技術的な解決の模索も必要だろう。日本にはそのほうが向いているかもしれない。排出CO2あたりのカロリーといった効率の指標では圧倒的な技術力を持っているし、不可能かと思われた公害問題もほぼ解決し、ゴミの分別収集も行っている。 たくさんの国が入ると形式化するので、まず日米中の三国で協力するのがいい。なぜならこの三国は、人種も文化も多様であり、経済と科学技術の大国として当事者能力と責任があり(アメリカは大量のシェールオイル、シェールガス利用、中国は大量の原発建設を計画)、かつてのヨーロッパに代わって、今後の人類の行く先を示すべき国だと思うからである。 アメリカと中国は、欲望を抑制する方向の理念では動かない国である。政治的にも協力は難しい。であるならば、「抑制」を強制するのではなく、問題の究明と対策に「挑戦」すると発想を転換してみてはどうだろうか。相手は「人類共通の敵」である。軍事的緊張を高めつつあるアメリカと中国も、共通の敵に対しては協力するべきであることを理解するのではないか。日本は幹事役として汗をかけばいい。 19、20世紀、ヨーロッパの科学技術者は「発展の文明」を主導してきた。21世紀、日米中の科学技術者は「制御の文明」を主導すべきである。いわば「大西洋の理念」から「太平洋の理念」への転換である。