今なお未勝利のローテーション投手が8人。彼らはなぜ勝てないのか?
開幕から1か月が過ぎようとしているが、今なお未勝利のままのローテーション投手がいる。巨人の大竹寛(31)ら勝てずに2軍調整を余儀なくされている投手を除くと、セ・リーグでは、阪神の岩田稔(31)、広島の大瀬良大地(23)、中日の新外国人、ラウル・バルデス(37)、横浜DeNAの久保康友(34)、ヤクルトの大卒2年目の杉浦稔大(23)、パ・リーグでは、オリックスの西勇輝(24)、楽天の美馬学(29)と塩見貴洋(26)だ。セに未勝利投手が多いのは、打席に立つため、ゲーム展開上勝ちがつく前に交代を命じられるケースが多いことも考えられるのだが、彼らは、なぜ勝てていないのか。 元千葉ロッテの名捕手、里崎智也氏は、「それらを分析するには、まず、それぞれのピッチャーの防御率、クオリティスタート(6回、自責点3)の有無をチェックする必要があるでしょう。防御率が3.50以上の選手は、ピッチャーの技術、調子、配球などに起因している場合が少なくありません。横浜DeNAの久保なんかは、私が解説で見た試合では、ボールが高かったし明らかに本人の技術的な問題があります。だが、逆にバルデスや塩見のように、いいピッチングをしているのに打線の援護がない、もしくは、相手投手がエース級で、打ちあぐむというような勝てない要因が他にある場合もあります。先取点をもらったかどうも重要です。一概に『こうだ!』という答えはありません」と見ている。
表の成績を見ていただきたいが、里崎氏の言う、防御率、3.50以上にあてはまるのは、久保、大瀬良、岩田、西の4人。 21日の横浜DeNA対阪神戦では、開幕投手を務めた久保と岩田が直接対決。久保は、立ち上がりの制球難を解消できずに初回に2失点。中畑監督が「エースが嫌な空気を作ってはいけない!」と激怒するほど、ふがいない内容だったが、一方、先取点をもらった阪神の岩田の方は変化球が切れて7回一死までパーフェクト。そのまま今季初勝利に結びつけるのかと思われたが、突如、3連打を浴びるなど崩れた。 「力んでしまった」とは、岩田の試合後コメント。ベテランといえど、未勝利の投手が勝利を意識したゆえの心理的変化がもたらしたミスだったのか。 里崎氏は「中継ぎ陣の出来も影響します。阪神、広島、横浜DeNA、楽天については、中継ぎがふるわないから、先発に勝ちをつけられない。もしくは、限界を超えて先発を引っ張りすぎて打たれるという事態にも陥っています。中継ぎ陣の信用が低いチームの陥る典型的な例です。ここで先発を酷使しすぎると、故障もしくは終盤に疲労度が増してパフォーマンス能力が下がる危険性もあります」という。また「大瀬良や西のように活躍した翌年のシーズンは、相手も研究をしてくるし、2年目は、よほど用心してかからないと落とし穴が待っています」と警鐘を鳴らす。 「援護がなくとも点を与えなければ負けない」と言う投手や指導者も少なくないが、「点をやらないのに勝てない」という試合も現実にはある。楽天の塩見は、7日のソフトバンク戦で、大隣憲司(30)と投げ合って9回を無失点に抑えながら勝てなかった。防御率も、2.77と悪くない。ここまで4試合の先発でクオリティスタートを守れなかったのは1試合だけ。彼の好投で、チームはひとつ勝ちを拾っている。塩見が投げた4試合のチームの平均得点は、0.8点。ソフトバンク戦に象徴されるように援護がないのである。