住宅ローンの借り換えで返済額400万円減の試算も…シミュレーション利用前に知っておきたい注意点
3.固定金利型から変動金利型への借り換えの場合、金利上昇リスクを負うこと Aさんの場合、全期間固定金利型から変動金利型への借換えを検討されていました。変動金利型は低い金利が魅力ですが、金利は一定ではなく、今後の金利の動向によっては、左図のとおり、利息額と総返済額が現状を上回る可能性も考えられます。 金利上昇時には返済額が急激に上がらないよう、5年ルールや125%ルールが設けられているのが一般的ですが、返済額が増えないことを約束するものではありませんし、金利に上限はありません。キャンペーンの適用により金利が下がっている場合は、キャンペーンが終了する可能性もあります。 注意点をふまえながらお話しをうかがっていくと、Aさんにとっては、必ずしも借り換えが適切な選択肢ではないかもしれないということがわかってきました。 諸費用を出し借換えをすれば確かに当面の返済額は減らせることが期待されましたが、返済期間がまだ20年以上残っていることに加え、数年後にはお子様の高校受験も控えていらっしゃいます。10年以内に大学受験を控え、教育費のピークを迎えることが想定されましたから、もしシミュレーションどおり借り換えを実行するとすれば、諸費用約100万円に加え、金利上昇時には毎月返済額の増加によって、教育費に使える月々のお金が減ってしまう可能性が考えられました。それは、教育費をできる限り出してあげたいと考えていらっしゃったAさんにとって、望ましい状況ではありませんでした。 変動金利型と比較すれば高いAさんの金利も、直近の固定金利型のものと比べると低い水準で、今後の金利上昇を考えれば必要な保険料とも考えられます。また、返済額軽減を目的とするのであれば、借り換えではなく、同じ金融機関での金利交渉も一案となります。 借り換えシミュレーションを行うと、目先の金額に目が行きがちになりますが、ライフプランにもとづき、今とこれからのご自身にとって望ましいお金の使い方につながることなのか、という点にもぜひ着目していただきたいと思います。
内田英子(CFP/FP1級/消費生活アドバイザー/住宅ローンアドバイザー)