名古屋発「クール!」五輪種目がエンタメに。デジタルクライミングって何?
2020年東京オリンピックの正式種目となった「スポーツクライミング」。今年5月から6月にかけて東京・八王子で開かれた世界選手権で日本勢が躍進したり、人気選手がテレビコマーシャルに出たりしています。そんな中で、名古屋の企業が開発した「WONDERWALL(ワンダーウォール)」にも注目度が高まっています。壁を登るスポーツと、映像や音によるエンターテインメントが融合した「デジタルクライミング」だというのですが、どんなものなのでしょう。
ウェブ会社が「枠超えよう」とスピード開発
スポーツクライミングでは、いかに早くゴールまで登りきるか、どこまで登れるかなどが求められます。それに対して「WONDERWALL」は上方向だけでなく、下や左右へも動くことができます。その動いた範囲を「面」でとらえ、面積がどれくらい多いかを競います。 たとえば1対1で競い合う「JINTORI」では、2人の動いた面が色分けされ、どちらの色が多いかを競います。まさに「陣取り」ゲームのようです。「ENEMY NULL」は、じゃまをする敵から逃げながら、制限時間内でいかに多くの面に色を塗れるかを競う1人用の陣取りゲーム。また、プロジェクションマッピングで打ち上げられた「花火」玉の映像に触れて、制限時間内に大輪の花をいくつ咲かせられるかを競う「HANABI」もあります。 開発した名古屋市中区の「アクアリング」は、ウェブサイトなどの企画・構築・運用やデジタルメディアの企画、コミュニケーション戦略の立案サポートなどを手がける会社です。 「従来の仕事の枠を超えて、自分たちが本当におもしろいと感じ、なおかつ社会的意義のあるものをつくろう」という社員の思いから、2016年に開発プロジェクトがスタート。メンバーの茂森仙直さんがクライミングを趣味にしていることから、クライミングコンテンツを着想。仕事を通して蓄積したプロジェクションマッピングの経験と人のネットワークを生かし、デジタル技術によってこれまでにない楽しみ方を模索しました。 プロジェクトでは「まず試そう」とスピード感を重視しました。スタートから1カ月でテストイベントにこぎつけ、名古屋市内のボルダリングジムで会員に体験してもらったところ盛り上がり、好感触を得ます。 「WONDERWALLでは登ってもいいし、行ったり来たり、止まることもできます。その動きをビジュアライズしているので、見る側もおもしろいのです」とメンバーの佐藤直樹さん。「クライマーがパーフォーマー」となり、登っている人だけでなく、見ている「観客」も楽しめるのが特徴だといいます。 イベントでの採用は東京でも。スポーツクライミングの祭典「ADIDAS ROCKSTARS TOKYO 2016」で競技後のイベントとして実施されました。