名古屋発「クール!」五輪種目がエンタメに。デジタルクライミングって何?
全国の施設に続々導入、世界でも評価
さらに、メディアの「2017年ヒット予測ベスト30」に取り上げられ、問い合わせが増えていきます。 「WONDERWALLは、“壁”がないと成立しません。当初はボルダリングジムなどでのイベントしか想定していませんでした。しかし、『どこでできるのか』という問い合わせが増えてきて、次の手が必要になってきました」 イベントごとにプロジェクトメンバーがセッティングをしてきましたが、常設できる設備の必要性を感じます。そこで、クライミングウォールの設計・施工で実績の多い企業と提携し、2017年に専用スタンドを開発。アスレチック施設などへ導入できるようにしました。 今年3月には、大阪にある大型複合施設「EXPOCITY」内の「VS PARK」で楽しめるように。7月には、東京の次世代型アスレチック施設「SPACE ATHLETIC TONDEMI 平和島店」に導入されます。 また、エンターテイメント性やアート性の評価は国内外で高く、2017年度グッドデザイン賞を受賞。今年はシンガポールグッドデザイン賞と、第22回Webby賞(The Webby Award)を獲得しています。 Webby賞は「インターネットのアカデミー賞」と評され、国際デジタル芸術科学アカデミーがウェブサイトや作品を表彰するもの。世界約70カ国から1万3,000以上のエントリーがあったなか、「ゲーム・スポーツ」のカテゴリーで選ばれました。授賞式では他の参加者から「クール!」と称賛され、海外からの問い合わせも来ているといいます。スポーツにエンターテインメントを掛けあわせた新しいコンテンツは、国境を超えて広く受け入れられているようです。 「プロジェクトが進むなかで実感したのは、多様な層が親しみやすいこと。これまでクライミングに興味のなかった人や、子どもから大人まで幅広い年代の人に、登る楽しさを体感してもらえる可能性があります。イベントでも、『最近は木登りをする環境になく、子どもがこうした体験をできるのはよいこと』という参加者からの声もいただきました。スポーツクライミングはまだメジャーとはいえないかもしれませんが、クリエイティブの要素を重ねれば、これまでとは違う広がりが生まれるのではないでしょうか。WONDERWALLがクライミングの競技人口を増やしたり、裾野を広げることにつながったりすればいい」と茂森さんは話します。 スポーツクライミングのアスリートの活躍とともに、身近になりつつあるデジタルクライミングも楽しみたいものです。 (南由美子/Newdra) -------------------- ■南由美子(みなみ・ゆみこ)愛知県生まれ。飲料メーカーや編集プロダクション勤務を経てフリーのライターに。中部エリアの地域情報ポータルサイトや、広報誌での食関連記事などの制作に携わる。