外国人介護労働者の受け入れ実態 「受け入れようとは思わない」が58% 事業所の意識変化が課題
2023年度の「介護労働実態調査」において、外国人介護労働者を受け入れている事業所はわずか13.4%で、全体の82.5%が受け入れていないことが明らかになった。さらに、現在受け入れを行っていない事業所のうち、約31%が「今後検討する」と回答している一方で、「今後も受け入れようとは思わない」とする事業所が約58%と半数以上を占めており、介護業界での外国人材の導入が進むまでには依然としてハードルが高い状況が伺える。 【画像】2023年度「介護労働実態調査」結果の概要(グラフ/公益財団法人介護労働安定センター)
外国人介護人材導入への課題と現場の不安
外国人介護人材の受け入れには、言葉の壁や文化の違いが根深い課題となっている。日常会話だけでなく、介護現場では利用者の微妙なニュアンスや感情を汲み取る力が求められ、日本語能力が十分でないと意思疎通が難しく、ケアの質にも影響が及びかねない。また、外国人の接し方や文化的背景からくる価値観の違いが利用者にとっても抵抗感となる場合があり、こうした点が現場での受け入れに慎重さをもたらしている。 さらに、外国人労働者の雇用にあたっては、雇用管理や手続きの煩雑さが問題とされている。ビザの取得や更新手続きに加え、異文化対応に向けた教育も必要であり、日本人の雇用以上に手間がかかる。外国人労働者の定着率の低さも課題で、離職が相次ぐことで育成したリソースが無駄になるケースが少なくない。現場からは「せっかく採用しても長く続かない」といった声が上がっており、安定した労働力として定着させることの難しさが浮き彫りになっている。
国による外国人介護人材受け入れ支援策の現状
外国人介護人材の受け入れを促進するため、国は複数の在留資格制度を整備し、ガイドブックの更新や学習支援を行っている。外国人介護労働者向けには、日本語学習が無料で受けられるWEBコンテンツ「にほんごをまなぼう」のほか、特定技能評価試験の学習用テキスト、多言語対応の介護専門用語集なども提供され、介護職に関心を持つ外国人がスムーズに日本の介護現場へ適応できる体制が整えられつつある。また、日本の介護業務に関する一問一答形式のコンテンツも用意され、現場で必要とされる知識やスキルを段階的に身につけられる。 こうした支援策により、外国人の介護人材が日本語や業務に関心を持ちやすくなり、受け入れ環境の改善が進められているが、制度の普及に加え、現場の意識改革も必要とされるのが現実だ。
事業所の意識改革が鍵を握る
外国人介護労働者を受け入れている事業所のうち、82%が「現状維持」もしくは「受け入れ拡大」に前向きな方針を示している一方で、未受け入れ事業所の多くが消極的なままだ。介護業界の人手不足解消に向けて、外国人労働者を安定した戦力として迎え入れるためには、受け入れに慎重な事業所の意識改革が不可欠であろう。今後、外国人材が介護現場で十分に活躍できるような職場環境の整備と、受け入れの増加に向けた積極的な支援が求められている。 構成・文/介護ポストセブン編集部