財政破綻のJBCが亀田興毅氏らへ賠償金約1億円を満額支払う…東京ドームの支援を得て復活へ…“行列の”北村弁護士は「膿を出さねば改革は難しい」と不安視
東京ドームも今回の支援を決定するにあたり、組織改革を行い、財政の再建を含めた今後のしっかりとした運営プランを示し、そして協会の全面協力を取り付けることを条件としており、まずはJBCを破綻に追い込んだ経営責任を取る形で、永田理事長、浦谷執行理事の退任が決定したようだ。 ただ協会との“最終協議”はまだ終わっていない。 財政破綻の原因について「新型コロナの影響による収入の減少」と間違った分析をしていたJBC側は、各種ライセンス料や承認料などの値上げを求めているが、協会側が納得するだけの具体的な再建プランが示されていない。復活するJBCでは、決定機関である理事の人数を9人から7人に減らし、これまで2人だった協会側の理事を3人に増やすなどの案を提示しているが、組織の人件費を含めた合理化や、今後の経営指針が明確ではないため、各種ライセンス料などの値上げに対して簡単にイエスと返答できる状況には至っていない。 また永田理事長に代わる新理事長には、東京ドームグループの東京ドームホテルで社長&総支配人、会長を務めていた萩原氏が就任する方向で人事が進められている。 しかし、協会を含めた関係各所への根回しも終わっておらず、東京ドームからの“天下り人事”に任せたことで失敗してきた過去の例があるため不安の声が業界内にある。 北村弁護士も不安を持つ一人だ。 損害賠償請求裁判を行った際、興毅氏は、裁判の最大の目的は、「ボクシング界の発展のための組織の抜本的な改革」としていたが、ここまで、それに関するJBC側からの報告、返答は「一切ない」という。 「永田理事長と成富事務局長に弁済の協議でお会いした際、“改革する”とはおっしゃったが、具体的なことは何ひとつおっしゃっていなかった。きちんと改革することは難しい。正直、危険だなと思っていました。代理人の弁護士も(JBCの)人事、改革は、本件の解決(弁済)の次だと考えていらっしゃるようでした。単に(東京ドームから)“金を出してもらった、良かったね、ラッキーだね”で終わりだと考えているようであれば、その発想自体が間違っています。一般論として、その発想では改革はできません」 北村弁護士は、JBCに改革の意思があるのであれば、永田理事長、浦谷執行理事の退任に加えて、断行せねばならないアクションが2つあるという。 ひとつは亀田裁判で被告となった秋山弘志・元理事長、浦谷執行理事、森田健・元事務局長へ新生JBCから求償を行うこと。 「裁判で個人責任を負う方々にJBCがきちんと求償をしなければならないでしょう。ホームアドバイザーとしてアドバイスしていたJBCの評議員でもある弁護士たちの責任があるのかないのかも含めて徹底して追及する形をとらないと絶対に改革はできません」 東京ドームの支援をバックに3人を“救済”したJBCが、その3人に求償することは考え辛いが、それくらいの思い切った自浄努力を見せないと組織は生まれ変わらない。 そして、もうひとつが、第三者委員会を立ち上げて、一連の違法行為が行われた原因と、組織が財政破綻に陥った理由を検証することだという。 「膿を出す努力をしないと、身内だけで解決する発想ではこの組織は良くならない」 また現在考えられているJBCの理事会の構成についても、7人中2人がJBC側(東京ドーム)、3人が協会側で、残り2人がドクターなど中立の立場の人選となっていることに関しても「1人を巻き込めば過半数になる。そんなんじゃダメです。それよりもさらに重要なのが評議員をどうするか。彼らが理事の人事権を持っています。あくまでも“こちらから見れば”ですが、これまではどうしようもない評議員だったので」と問題視している。 北村弁護士は、賠償金の支払いが済んだから終わりではなく、今後もJBCの改革を求める声は出し続けていくという。 JBCは東京ドームの支援が決まったこともあり、早急に協会との合意を取り付け、今月中旬には一般財団法人の正式な復活を発表したい考えだが、再出発のタイミングは非常に大事だ。最初にボタンを掛け違えれば、また同じようなことが起きる可能性は否定できない。これまで曖昧だったガバナンスを整備し、ボクシングに不案内な新理事長をフォローする実務者の人選も重要となり、ボクサーやジムへの負担を増すことなく、赤字体質を脱却していく運営プランの構築とビジョンの設定が必要となる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)