営業としては「失格」だったのに...国際的に活躍するシェフの心を開いたコカ・コーラ社営業マンの意外な「姿勢」
地方のFラン大学卒で0から営業を始めた著者は、いかにして「日本一の営業」へと大変貌を遂げたのか? 「毎日が凄く辛い」「外回りをしている自分が情けない」...消極的に取り組み始めた営業の仕事が天職になるまでには、どんな心境の変化があったのか? 人と人との関わり合いである営業で得た「学び」には、どんなビジネスにも活かせるヒントが満載。仕事への向き合い方や他者の心の動かし方に迷うビジネスマン必読の話題作『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(山岡彰彦著)から、内容を抜粋して紹介する。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』連載第13回 『全ての仕事に共通する思考法...コカ・コーラ社の営業マンが「葬儀会場」に目を付けたワケ』より続く
売り込みより大事なこと
営業の仕事は売り込むことよりも、まずは相手の話をしっかり聴くことが重要です。しかし、相手の話は必ずしも発展的なもの、好意的なものであるとは限りません。説教めいた話を聴くだけで終わることもあれば、法外な条件を要求されることも少なくありません。 相手のメリットになりそうなことをあらかじめ考え、そのことをなんとか理解して欲しいと思って商談に臨むのですが、こちらの本題に入ることすらできないことも多いのです。
威圧的なシェフとの商談
そんな中、高知オリエントホテルでビヤガーデンをスタートさせるという情報が入ってきました。ホテルとの取引はあったのですがフードサービスではありません。早速、アポの電話を掛けるとフロントの方が料理長につないでくれました。 「はい。シェフの岡林ですがなんでしょう」 かなり威圧的な声です。一瞬腰が引けますが、それでもアポを取らなければなりません。 「お電話のお時間をいただき、ありがとうございます。お忙しいなかとは存じますが……」 こうしてなんとか商談の時間をいただくことができました。その訪問日、エントランスの片隅で岡林シェフを待ちますが、なかなかシェフは現れません。多くの人が行きかうなか、立ったままじっと待つしかありません。 「すまん、待たせてしまったなぁ」 ふいに横から声を掛けられます。岡林シェフです。 「お忙しいなか、お時間をいただき本当にありがとうございます」 深々と頭を下げて屋上のビヤガーデンの椅子に腰を掛けて商談が始まりましたが、岡林シェフの話にひたすら耳を傾けて聴き役に徹します。「こんなことをやりたい、業者に望むこと」などと話が広がっていきます。こちらからは岡林シェフの要望や意見に応じて小さな提案を行うだけで、商品や機材の説明はほとんどできない状況でした。