通信産業の今昔--自由化から40年間の栄枯盛衰
通信産業の40年、エンジニアの視点 1985年から2025年までの40年、通信産業は自由化とともに盛り上がりを見せ、急速な成長と発展を遂げた。今では成熟期を迎えたことは明らかである。私自身も、以前の連載を終了した後、コンサルタントから通信事業者のCTO(最高技術責任者)に身を転じ10年経った今、通信が成熟期に入った産業であることを強く実感している。 この産業の栄枯盛衰は、回線交換からパケット交換への、もっと平たく言えば、電話からインターネットへの変遷と密接に結びついている。技術的なイノベーションが、産業のライフサイクルを決定付ける。エンジニアにとっては、感慨深いことであるのと同時に、このライフサイクルに何か一石を投じることができないか、とも考えている昨今である。 さて、ここまで約40年間の「通信産業」のライフサイクルを概観したが、視野を広げて「情報通信産業」としてみると、全く異なる世界が広がっている。 通信(Telecommunications)と情報技術(IT:Information Technology)。「ICT」産業として、1つにくくられることも多いこの2つの産業は、不可分であると同時に、似て非なる産業でもある。次の第2回は、これについて考えてみたい。 また、今後の本連載では、プロトコル※10などの技術の変遷はもちろん、AIや大規模言語モデル(LLM)、量子暗号といったトレンド技術の利用や活用、またビッグテックとの関係といったビジネス的な視点についても取り上げていきたい。 ※10:通信規約。通信サービスを提供・利用するにあたって守らなければならない手順。 菊地泰敏 アルテリア・ネットワークス株式会社 フェロー 大阪大学基礎工学部情報工学科卒、同大学院修士課程修了。東京工業大学(現東京科学大学)大学院MOT(技術経営修士)、電子情報通信学会正会員。国際デジタル通信(現ソフトバンク)で国際ATMサービスの開発などを行った後、PRTM(現Strategy &)やローランド・ベルガーなどの戦略コンサルティング会社を経て、2015年にアルテリア・ネットワークスCTOに就任、現在に至る。