マイクロソフトの新OS「Windows 10 S」、ほかのWindowsと何が違う?
ちなみに、かつてWindowsには廉価版の「Windows RT」というバージョンがありましたが、OSの設計が従来のWindowsと根本的に異なるため、一般的なパソコンソフトの大部分が使えない(デスクトップアプリが使えない)という点が大きな物議を生み出しました。しかし、Windows 10 SはWindows 10 Proの機能制限版という位置づけになり、デスクトップアプリもWindowsストアでの配信に最適化されれば、Windows 10 Sの環境でも稼働します。 これにより、ソフトウェア開発者がWindows 10 S向けにソフトウェアを配布する場合には、Windowsストアに認証されてなくてはならず、今後対応するパソコンの販売が拡大していけば、Windowsストアに並ぶソフトウェアの数は一気に増える可能性があります。 実際、Appleは既にiTunesをWindowsストアで配信することを表明しています。MicrosoftはデスクトップアプリをWindowsストアでの配信に最適化するための環境をソフトウェア会社向けに無償提供しており、今後どれくらいのメジャーソフトウェアが対応するかに注目したいところです。 Windows 8に合わせて本格稼働したときも、Windows 10 Mobileが登場したときも課題に挙げられてきましたが、ユーザーの期待値に応えられるソフトウェアのラインナップとユーザー体験を創出することができるかどうかが、Windowsストアがユーザーに受け入れられるか否かを左右する大きなカギだと言えるでしょう。
Windows 10 Sのメリットは安全性とコストパフォーマンス
ソフトウェアの導入プロセスが大きく変更されたことによって、従来のWindowsユーザーにとっては好きなソフトウェアを自由にインストールできない不便さを感じるかもしれません。 しかし、Windows 10 Sはこの“Microsoftが審査したアプリしかインストールできない”という信頼性をひとつのメリットにしており、ユーザーが安心してパソコンを利用できる担保になることが期待できます。Windows 10 Sが“教育機関向け”と位置付けられている理由もここにあります。 子どもがパソコンに触れるというシーンは、もはや珍しいものではありません。学校で授業の一環として利用する場合もあれば、自宅で親のパソコンに子どもが触れるという場合も多いでしょう。 ただ、ユーザーがウェブサイトで配布されている様々なソフトウェアを自由にインストールできるというWindowsの自由さは、子どもが親や教育者の意図しないソフトウェアを使い、リスクに晒されるかもしれないという懸念をはらんだものでした。こうしたリスクを、Microsoftが審査・認証するWindowsストアでの配布という形に制限することによって軽減することが期待できます。 なお、このWindows 10 Sは教育機関での利用を想定したセキュリティの強化や管理者機能の拡充も行われており、Microsoftが教育市場におけるシェアを確固たるものにしたいという狙いが伺えます。 加えて、コストパフォーマンスの高さもWindows 10 Sの大きなメリットだということができます。日本マイクロソフトはこのWindows 10 Sについて「現時点ではパソコン本体へのプリインストールでの提供のみで、単体での販売予定はない」としており、米国ではWindows 10 Sを搭載したパソコンが主要PCメーカーから189ドル(日本円で約2万円)から発売されると表明、従来のWindowsパソコンに対して相当な安価になることが期待されます。 また、日本マイクロソフトはWindows 10 Sを搭載したノートパソコン「Surface Laptop」を7月に発売することを発表しており、価格は13万6944円(税込)から。CPUにインテルのCore i5プロセッサ、メモリ4GB、SSD128GBを搭載し、Microsoft Officeもプリインストールします。Windows 10 Proを搭載したノートパソコン「Surface Book」が約20万円からであることを踏まえると、コストパフォーマンスはかなり良いと言えるでしょう。