小笠原の電撃引退と柴崎岳が持っていた「リストバンド」
実際に柴崎はスペインへ渡り、昨シーズンから戦いの場をラ・リーガ1部のヘタフェへと変えた。一方の小笠原は柴崎へ託すはずだったバトンを握り、プレー時間が確実に減ってきている状況にありながらも、ピッチの内外で黎明期から受け継がれる常勝軍団の経験を伝える役目を担ってきた。 そして、生身の人間である以上は、いつかは誰でも迎える引退を決意した。畏敬の念を抱き続ける小笠原への感謝の思いを込めるように、柴崎は間近に迫ったアジアカップへの思いを新たにしている。 「優勝するしかないというか、優勝しか見えていませんし、個人として自信と決意も固めてきました。難しい試合になるというか、難しい試合にさせられると思うし、だからこそ試合のなかでの柔軟な対応力を出せなければ勝てない。チーム全体をしっかりマネジメントすることが僕の役割だと思う」 身にまとうユニフォームは、ディープレッドとサムライブルーで異なる。それでも体のなかで静かに、それでいて力強く脈打たせるイズムは変わらない。すべてのプレーはチームのために。黒子として森保ジャパンの攻守を司り、日本を2大会ぶり5度目の頂点に導くことが、日本代表としても55試合に出場した偉大なる大先輩への最高のエールとなる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)