「3・2・1」島根原発2号機、緊張の原子炉起動 全国唯一の県庁所在地立地 住民は避難に不安の声
全国で唯一の「県庁所在地の原発」が再び動き出した。中国電力の島根原発2号機(島根県松江市)では7日、緊張感が漂う中央制御室で運転員が原子炉を起動。予定通り、核分裂が安定的に続く臨界状態に達した。原発から30キロ圏内には約45万人が暮らす。「事故の際に本当に避難できるのか」―。地震などと重なる複合災害も想定され、住民から不安の声も漏れる。 【写真・地図・年表】【写真と年表】島根原発と松江市街地を捉えた空撮や2号機を巡る主な動きなど 「3・2・1」。7日午後2時58分、制御室に原子炉起動に向けて運転員のカウントダウンの声が響いた後、別の運転員が起動状態にするレバーを倒した。午後3時に制御棒1本が炉心から引き抜かれ、核分裂反応が始まった。原子力規制庁の職員が見守る中、運転員11人は出力上昇を示す中性子の数値を入念に確認し、137本ある制御棒の引き抜きを進めた。午後4時50分、臨界に達した。 再稼働の直後、中電島根原子力本部の三村秀行本部長は敷地内の管理事務所で報道陣の取材に応じた。「安全対策を含め国の許認可に真摯(しんし)に対応することで今日を迎えられた。発電再開に向け、今後も一つずつ安全確認していく」と語った。 中電は来年1月上旬に営業運転を再開する計画だが、住民の間には、原発事故の際に避難できるのか不安がある。原発30キロ圏内の住民数は全国で3番目に多い。事故時は島根県と各市の示すルートを使い、すぐに避難するか、放射性物質を避けるために屋内退避した後に避難する。 元日の能登半島地震では多くの道路が寸断され、半島から逃げる難しさが浮き彫りになった。実際、11月に島根半島部から自家用車やバスで避難する訓練に参加した住民からは「津波が来たら予定のルートは通れない」「道に迷いそう」と避難計画の実効性を疑問視する声が上がった。 より深刻なのが、自力での避難が困難な高齢者や障害者たち「要支援者」だ。県の2015年と18年の調査では、在宅や入院、入所者を含め県内30キロ圏内に約4万5千人いる。誰が移動を手伝い、どこへ逃げるのかは事故時に県が調整する。 避難者を受け入れる側の医師も懸念を抱える。県立中央病院(出雲市)の山森祐治副院長は「避難する医療スタッフもいる。大勢のけが人や被曝(ひばく)患者を受け入れられるか。県や住民も含めて現場は改めて考えるべきだ」と言う。松江生協病院(松江市)の真木高之院長は再稼働自体に反対する。「誰も安全を保証できない。中電や行政の責任は大きい」
中国新聞社