「本当にあった」に学ぶトレッキングの撤退ラインとは? 強風時の御嶽山登山編
稜線上は爆風地獄だった
覚明堂の上の階段を登りきると、ほぼ平坦でだだっ広い山上部へ出ます。西側の斜面が途切れたとたんに、風上側に向かって体重を乗せないと足をすくわれるレベルの強風が…… レインウェアに当たる雨も、水滴じゃなくて霰(あられ)じゃないのかと思うほど、痛いレベルで吹き付けています。二ノ池までは、距離は短いけれど、視界も悪いし、なにより風が強すぎる。このメンバーで進むのは危険と判断。20歩も進んでないけど、「引き返します!」
緊急避難所状態の山小屋のありがたさ
せっかく登ってきた道をひきかえし、覚明堂の下にある石室山荘へ。 「悪天で先へ進めないので泊めていただけませんか」と聞いてみました。 「そういう方が今日はたくさん来られていて、食材が足りなくて通常の食事が用意できないのですが、それでもよければ」とのこと。 一同、「屋根と壁があるだけで充分です!」 みんな手がかじかんで、濡れたレインウェアや、靴を脱ぐのが困難。低体温症の一歩手前の状況です。引き返していなかったら、致命的な事態になっていたかもしれません。 6名ほどの登山者が先着していたのですが、全員ずぶ濡れ。干してあるレインウェアも帽子も手袋も、すべての衣類から水が滴っていました。 お宿では、土間の両脇に濡れたものを置けるようにブルーシートを敷いてくれていて、炭火を起こしてくれていました。みんな靴の中まで濡れてしまったようで、中敷きを出して干してる方も。 結局、予約の方が4名、悪天のため急遽逃げ込んできた人が6名。 五ノ池小屋には本当に申し訳なかったのですが、撤退を決めてすぐに電話で事情を伝えました。 「どうぞお気をつけて」と心づかいの感じられるご対応でした。 夜中も風の音がうなりをあげていましたが、山小屋の中は本当に快適。山小屋ってありがたい! そして、朝起きたら天候回復。晴れてる! ぬくぬくあったかい布団で眠ってる間に、濡れものもすっかり乾きました。とりあえず山頂を踏み、時間に余裕があるので、お花畑を見るために五ノ池まで足を伸ばすつもりで出発しました。