「Art Fair NAKANOJO 2024」開幕レポート。中之条だからこそできるアーティスト主導のアートフェアの可能性
群馬・中之条町で、アーティストが立ち上げ運営する新たなアートフェア「Art Fair NAKANOJO 2024」が、旧廣盛酒造にて開幕した。会期は6月23日まで。 中之条町では、2007年より国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ」を隔年開催してきた。初開催より18年を経たことで、同ビエンナーレは町を象徴するイベントになった。いっぽうで、2年に1度の開催の合間の年は「アートがない年」となってしまっていたが、「Art Fair NAKANOJO 2024」はこのビエンナーレの狭間を埋めるかたちで開催されることとなったアートフェアだ。 本アートフェアの最大の特徴は、作家が主導する点だ。中之条ビエンナーレに参加した作家を中心に47組の作家が自身の作品を紹介し、来場者が購入できる見本市を開催する試みとなっている。会場には多くの作家が滞在しており、直接作品の説明を聞きながら購入も検討することができる。 会場となっているのは、中之条ビエンナーレでも会場として使われてきた旧廣盛酒造。フェアでもタンクや貯蔵庫などをそのままに、その設備を活かすかたちで作品展示・販売が行われている。 例えば、アーサー・ファンと林麻依子は、来客を迎える場所だったと思われる玄関横の趣ある部屋に作品を展示。大きな木製のテーブルに作品を配置することで、ホワイトキューブとはまた異なる物語性が生まれている。 かつて貯蔵所だった空間は、その天井高を活かしてパネルを設置して大型作品を多数展示。飯沢康輔の多種多様で迫力のある大型の人物画などは、この空間だからこそ映えるプレゼンテーションだといえる。 展示は2階にも続いている。2階へとつながる木製の階段には藤浪洋平の絵画作品を展示しており、この建築の持つ立体的な空間が強く意識される。 2階にはかつて休憩所として使われていたと思われる畳敷きの和室空間もある。タニヤ・P・ジョンソン、桑山彰彦、嘉春佳らの手仕事の趣が強く残る作品は、こうした空間で見ることでより自室で展示するイメージを喚起させられる。 運営委員長であり自身もアーティストである西島雄志は、本展の意義について次のように語った。「初めての試みなので、出展作家にも協力を仰ぎながらフェアをつくりあげた。中之条は長くアートフェアを開催してきたので、官民のアートに対する協力体制が厚く、新しい試みもしやすい土壌がある。首都圏から訪れてくれる人はもちろん、いつもビエンナーレを見てくれている地元の人たちが、出展していた作家の作品を購入して自宅に飾るという体験をしてもらえるととてもうれしい」。 長く続いてきた芸術祭を下敷きに、作品を「買う」という体験をつたえようとしている本フェア、東京ではない、中之条という土地だから可能になったこのアートフェアに、ぜひ足を運んでこの土地の空気ごと楽しんでみてほしい。
文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)