上皇さま90歳 「平成のお言葉」を振り返る~被災者、平和、社会問題、家庭への思い【皇室 a Moment】
●2019(平成31)年 退位礼正殿の儀 上皇さま:「今日(こんにち)をもち、天皇としての務めを終えることになりました」「即位から30年、これまでの天皇としての務めを、国民への深い信頼と敬愛をもって行い得たことは、幸せなことでした。明日から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」 ――「幸せなことでした」というお言葉が印象的ですが、令和はもう6年になりますから早いものですね。 そうですね。上皇さまは、皇太子時代に「言ったことは必ず実行する。実行しないことを言うのは嫌いです」と話されていますから、発言の一つ一つは、ご自身に対する厳しさ、責任に裏打ちされていると思います。象徴天皇として即位した初めての天皇として、30年にわたる歩みは“海図なき航海”と言われましたが、数々のお言葉はその“航跡”ですので、胸に改めて迫ってきます。今の天皇陛下はその背中を皇太子として見てこられましたから、上皇さまをお手本に公務に当たられていくと思っています。「象徴」としての旅を終えた上皇さま、そして一緒に旅をしてきた上皇后さまには、お元気でお過ごしいただきたいと願っています。 ――今回、折々の言葉に触れて、困難な時に思いを寄せて、国民と共に歩んで来て下さったのだなというのを改めて感じました。 【井上茂男(いのうえ・しげお)】 日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)