指名漏れの瞬間は「もう…忘れられなくて」ドラフト“史上最多”6人指名の富士大「唯一の指名漏れ」選手が明かした胸中…心に期する2年後の下剋上
指名漏れの瞬間は…「忘れられない」
希望が絶たれた瞬間は、今でもはっきりと覚えている。それは、12球団で唯一、7巡目まで指名していた西武が、8巡目を指名せず「選択終了」を宣言したときだ。 「周りからは『最後にあるぞ』と言われていたんですけど、呼ばれなくて。あの瞬間というのはもう……忘れられなくて、とにかく悔しかったですね」 育成ドラフトが始まると、佐々木はまだ名前が呼ばれていない坂本、長島とともに会見場の最前列に移動した。 実はこの時点で、佐々木は「プロに行けない」とわかっていた。というのも、以前から声を掛けてくれていた社会人チームに筋を通すために、「支配下で指名されなければお世話になります」と約束していたからだった。つまり佐々木は、“支配下縛り”でドラフトに臨んだわけである。 その事実を公表していなかったため、育成ドラフトへと移行してからも会場に残っていた佐々木が、抱いていた胸中を明かす。 「そこはもう、諦めるしかなかったというか。あとは坂本と長島の名前が呼ばれるまで、ふたりを応援するだけでしたね」 坂本と長島の名が呼ばれ、ドラフトで指名された6人が、カメラが放つ無数のフラッシュに包まれる。プロへと巣立つ彼らを遠目で眺めていた佐々木は、「複雑な気持ちでした」と言葉を漏らすが、ドラフト後にチームメートが「ご飯に行こう」と誘ってくれたことで悔しさを紛らわすことができたし、なにより救われたのだと頭を下げた。 それでもまだ気落ちしていた佐々木の心を切り替えさせ、再び前を向かせてくれたのが、監督の安田だった。
監督から「2年後のドラフトはもう始まっている」と…
ドラフトの2日後には、明治神宮大会出場を懸けた代表決定戦があり、そこへ向けてこのようにハッパをかけられたのだという。 「代表決定戦にもスカウトが来てるからな。ここで打てば『やっぱり獲っておけば』と後悔させられるかもしれないし、『これからも佐々木を見ておいてください』と報告が行くはずだから。2年後のドラフトは、もう始まっていると思ってやれよ」 佐々木は仙台大との決勝戦で同点タイムリーを放つなど、2試合で3安打と気を吐いた。 だが、明治神宮大会では、創価大との初戦で快音を響かせられず、チームも敗れた。「まだまだ反省するところはあります」と表情は険しかったものの、「気持ちはもう切り替わっています」と終始、俯くことはなかった。 戦は、すでに始まっている。 佐々木は「2年後」と、何度も口にしていた。高校で野球を辞めようとしていた青年は、今やプロへの意識が一層、強くなっている。 「社会人で頑張って、2年後、ドラフトの上位でプロに行くという目標を立てました」 仲間たちの声が聞こえる。 指名漏れの悲劇から一歩ずつ踏み出すたびに、先にプロの道に進む6人やチームメートたちの激励が、佐々木のなかで反響する。 「2年後、プロになるお前を待ってるぞ」
(「野球クロスロード」田口元義 = 文)
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