《インフルエンザ警報発令中》感染のピークは年末年始か「帰省しない選択肢も」専門家が警鐘
新型コロナ禍前に舞い戻った
この流行のペースでいくと、年末年始から1月中旬にかけてが、感染のピークになるといわれている。インフルエンザとともに「最悪な年末年始」を迎える恐れはないのだろうか。 急激な感染拡大について、感染症に詳しいKARADA内科クリニックの田中雅之院長は次のように説明する。 「私どものクリニックにも連日、多くの患者さんがいらしています。今回のような急速な感染拡大はインフルエンザにおいてはそれほど珍しいことではありません。むしろ、現状はコロナ前の時代に舞い戻った感覚があります」 2020年以降の新型コロナ禍では感染予防のため、手洗い・うがいを徹底させ、接触機会も減少していた。飲食店などの営業規模縮小なども相まって、季節性インフルエンザの流行が抑えられていた。しかし、コロナ禍が落ち着き、以前の生活に戻りつつある現在、久しぶりにインフルエンザが猛威を振るい始めたというわけだ。 「インフルエンザの流行の要因はいろいろあります。冬の低温や乾燥などの気象状況が感染を拡大する大きな要因の一つといわれています。そのため、基本的には北半球では冬に、南半球のオーストラリアなどでは日本の夏に流行する感染症です。コロナ禍で停滞していた国際的な人の移動が活発になったことなども今年の感染症拡大に影響している可能性もあります。当然、会食など接触の機会が増えたことでもコロナ禍前の様相に戻ったことを診察を通じて感じています」(田中院長、以下「」も)
例年に比べて症状は重い?
前出の久仁子さんが感じた「今年のインフルエンザの症状は例年に比べて重い」との印象について、田中院長はこう話す。 「インフルエンザ感染症による症状は基本的にとても辛いです。特に免疫力が低下していない方であっても、高熱や身体の倦怠感、関節痛、のどの痛みや咳、痰、鼻水が出るなどの症状が多様であり、強く出ます。今年のウイルスが特に強いわけではなく、この病気本来の特徴なのです」 感染拡大で薬不足も一部で指摘されているが、田中院長によると首都圏は「インフルエンザ治療薬は基本的に手に入る」とのこと。ただし市販の風邪薬である「総合感冒薬」や「咳止め」など不足しているものもある。 「咳止めは本当に少ないですね。ただ、いろいろな種類があるので、症状や状態にあわせてうまく使い分けています。例えば漢方薬の使用や、症状が長く続く人には吸入薬を切り替えるなどおこなっています」 インフルエンザの潜伏期間は個人差はあるが1日~3日ほど、平均すると2日程度と言われている。年末に感染した場合、帰省先で発症する可能性も十分にある。 帰省を取りやめるかどうかは状況次第だが、前出の久仁子さんのように「感染リスクを考慮して控える」判断も有効だ。 「発症後、一定の隔離が適切に実施できるのであれば帰省も選択肢の一つです。ただし、人混みを移動することで感染拡大のきっかけをつくってしまう。医学的には、発症後5日間、あるいは、解熱後2日間は感染の可能性を懸念します。帰省する際、感染を広げない対策も十分に考えてもらいたい」 もし、医療機関が休みの年始にインフルエンザを発症したらどうしたらいいのだろうか。後編記事『「普段健康な人なら、自力で治せる病気の一つ」…《インフルエンザ警報発令中!》医療機関が休みの新年でも慌てないための心構え』に続きます。
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