ウェアラブルカメラつけた警察官も配置 脅威の芽つむ万博警備を目指す警察当局の本気度
2025年大阪・関西万博は来年4月の開幕まで5カ月を切り、警備体制の構築も急ピッチで進められている。大勢の人が集まる大規模イベントが半年にわたって続くため、継続的な雑踏事故対策に加え、要人訪問も見据えたテロ対策や災害対応など、対処すべき事案は多岐にわたる。大阪府警は10月に万博警備の対策室を設置し、今月19日には警察庁の露木康浩長官が会場を視察。交通事業者など民間とも連携し、隙のない警備網を構築する方針だ。 【写真】ガス爆発が起きた万博会場で建設中のトイレ。コンクリートの床などが破損した 「今回の万博警備は複雑かつ困難なオペレーションになる。現場責任者として、警備を万全にする決意を新たにした」。19日午後、万博会場となる人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)を視察した露木長官は報道陣にこう強調した。 皇室関係行事やサミットなど警察が大規模な警備体制を敷く機会は少なくないが、その中でも万博警備は特異といえる。テロ対策や警備に詳しい公共政策調査会研究センター長の板橋功氏は「一般来場者と国内外の要人への警戒が同時に求められ、ハードな任務になる」と指摘。半年間にわたって緊張を維持する必要があるため、警察当局の負担は大きいとし「民間との連携も重要になる」と強調する。 大阪府警は会期中の事件事故に対応するため、年明けにも夢洲に臨時の警察部隊「会場警察隊」(仮称)を設置。警察官はウェアラブル(装着型)カメラを装着し、リアルタイムで指揮所と映像を共有する形式での警備を想定する。各パビリオンに民間の警備員も配置される予定で、府警幹部は「緊密に連携を取りたい」と話す。 板橋氏によると、会場が人工島という点を踏まえた対策も重要となる。 万博では不特定多数の人が集まる「ソフトターゲット」のほか、要人の訪問を狙ったテロ対策が求められる。警察当局は近年、単独でテロなどを計画し実行する「ローンオフェンダー」への警戒を強めるが、島にテロリストを侵入させない水際対策が鍵となる。地震や台風などの自然災害に備え、避難計画など緊急時を想定した準備も整えなければならない。 大阪では令和元年6月、夢洲の隣の人工島・咲洲(さきしま)で20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が開かれたが、その際は男が会場周辺に煙玉を置く事件が発生した。こうした事態を踏まえ、万博会場周辺には不審者の侵入を防ぐためセンサー内臓のセキュリティーフェンスを張り巡らせ、会場のゲートでは金属探知機で飲み物を含めた所持品の検査を徹底する。