青森山田が苦しみながらも矢板中央をPK戦の末に下しベスト8
令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)は30日に3回戦を行ない、青森山田と矢板中央が対戦。35分ハーフの前後半を終えてもスコアレスのまま決着が付かなかった一戦は0-0(PK5-4)で青森山田が勝利した。31日の準々決勝では帝京長岡と対戦する。 【フォトギャラリー】青森山田 vs 矢板中央 「矢板中央さんがうちと戦う時、球際でかなり強度を上げてやってくるのは想像していた」と話すのは青森山田の正木昌宣監督。「こういう試合展開を想像していた。自分たちの思った通りで最悪、PKに行くのは分かっていたこと。身体の攻防になるし、隙のないチームであることが相手の絶対的な強みとしてあったので、こっちも負けずに強みにするため頑張ってきた」。矢板中央のDF2佐藤快風(3年)もそう続けた通り、試合開始とともに各所で激しいバトルが繰り広げられた。 最初のチャンスは前半9分。ハーフウェーライン左でのリスタートを青森山田が得るとMF7川口遼己(3年)がゴール前に展開。MF10谷川勇獅(3年)が合わせたボールのこぼれ球を狙ったが、シュートまで行けない。13分にもDF3福井史弥(2年)が低い位置からゴール前にクロスを送り、MF8別府育真(3年)が合わせに行ったが、わずかに合わなかった。 以降も青森山田はボールを奪ったら素早く前方に展開し、DF5小沼蒼珠(3年)のロングスローから矢板中央ゴールに迫ろうとしたが、「ロングスローも投げる側として、『赤い壁って本当にあるんだ』と思っていました。本当にそれぐらい分厚くて、こじ開けるのが大変でした」(小沼)。FK、CKもこの日に向けてトリックプレーを準備してきたが、矢板中央の守りを見て、無理だと判断し、オーソドックスな形に切り替えたという。 スコアレスのまま進む試合展開で思い返されるのは、昨年の悔しさだ。昨年のインターハイは3回戦でのちに日本一となった明秀日立と対戦。スコアレスで試合を進む中、1点を取ろうと攻め急いだ隙を突かれ、70+3分に失点。このゴールが決勝点となり、0-1で敗れた。 「みんながハードワークをして、去年の教訓を生かしてイケイケにならず、ゼロで行けたのが大きかったと思います」と正木監督が振り返った通り、昨年の経験は生きた財産としてチームに残っている。当時、ベンチから先輩たちが負ける姿を見ていた小沼を中心に試合中も「去年と流れが一緒だぞ」という声も飛ばしながら、攻める時もカウンターのケアを忘れなかった。 対する矢板中央は前半26分に突破力のあるFW20堀内凰希(3年)を投入。後半に入ると前半同様、佐藤を中心とした3バックによる粘り強い守備を継続しながらもカウンターでの青森山田陣内まで攻め込む回数を増やしていく。後半7分にはクリアボールを堀内、MF7外山瑛人(3年)、FW18山下魁心(3年)と繋いでシュート。この流れで得た右CKのこぼれ球を粘り強くマイボールにして、ゴールネットを揺らしたが、ファール判定で得点には至らない。25分にはカウンターから堀内がシュートまで持ち込んだが、G1松田駿(3年)の正面に終わった。 試合終盤には青森山田が猛攻を仕掛ける時間帯もあったが、結局試合は動かずPK戦となった。ここでも両者、日々練習をしてきたこともあり、4番目までのキッカー全員がきっちり決めて差は開かない。迎えた5番目に輝きを放ったのは青森山田の守護神、松田。「PKはこれまでも福島に入ってからも、毎日PKをやっていたので、チームの皆が決めてくれるというのは自分の中では絶対だった。4本決められても1本止めれば、みんなが決めてくれるのでチームは勝てると思っていた。なんとしてでも1本止めるという気持ちで挑みました」。意気込みを示すかのようなセーブでキックを止めると、後攻のMF13大沢悠真(3年)がきっちり決めて、勝利を引き寄せた。 (文・写真=森田将義)