人口減でも「マンション家賃10%上昇」のなぜ…首都圏だけでなく大阪市、福岡市などで家賃高騰
■人口減少しても日本中で世帯数は増える 「人口減少していて、空き家が多い国で新築の住宅着工が多すぎる」という論調はよく聞くが、素人考えで、私はまったく逆だと分析している。まず、人口が減少しようが、家族形態の変化や単身者の増加により、日本中で世帯数は増えているし、当面の間増え続ける可能性は高い。住宅ストック数が供給ならば、需要は人口ではなく、世帯数なのである。 特に都市部の世帯数の伸びは大きく、国立社会保障・人口問題研究所(以降、社人研)の2015~2020年の世帯数増加率予測の伸び率は全国で1.45%予測に対して、実績は4.45%で306%(約3倍)違うし、東京都も同様に3.46%予測に対して、実績は7.86%で227%(約2.3倍)も違っている。
これを実績ベースで検証してみよう。都区部における2013~2018年の間の需給バランスは、新規供給は年2.1%あり、滅失(ストックを建て壊すもの)が年1.1%ある。滅失とは木造や鉄骨造であればおよそ30年で、鉄筋コンクリート造では50年で市場性を失い、解体することを指す。相続した築40年の実家を人に貸すことができるかと言ったら、難しいほうが多いだろう。そうしたことだ。 新規供給は年2.1%から滅失年1.1%を引いた1.0%を世帯数が上回れば需要過多、下回れば供給過多になる。この間の実績は1.1%だったので稼働率が上がった。2015~2020年の国勢調査期間での世帯数の増加は1.6%まで上がっているので、明らかな需要過多となり、稼働率がさらに上がっている。コロナ禍に需要が減退したものの、コロナ後の世帯数の伸びは年率1.9%となった現在、さらに賃料が上がっているのだ。
■世帯数予測を当てるには 先ほどの社人研の世帯数増加率予測は年率0.7%で、実績は1.6%だった。予測の0.7%は需給が一致する1.0%より小さいので、この予測を信じれば需給は緩み、家賃は下がるはずだった。 これに対して、実績の1.6%の場合、家賃は上昇することになる。たかだか5年先のことなので、世帯数予測はほぼ当てなければならない。私は仕事で人口予測をするが、誤差を少なく当てることができる。なぜなら、5年に1回のデータしかない国勢調査に頼らず、毎年・毎月発表される住民基本台帳人口を用いて予測しているからだ。