「少子化対策」で人口減少は止まらない! 日本国民が"本来の目的"を誤解する理由
茂木氏がこう説明する。 「まず、日本では『婚姻』が大きく減少しています。第2次ベビーブーム期で国中が出産ラッシュだった1970年代は、年間の婚姻件数が100万ほどありました。しかし、これが2020年代になると50万程度と約半数になっています。 未婚率の上昇も大きく、近年は30~34歳の女性の約3人に1人が未婚で、出生率の低下につながっています。女性の初婚平均年齢も1975年には24.7歳でしたが、2020年は29.4歳と45年で5歳近く上がりました。地方自治体の統計でも、初婚年齢は28~30歳程度に収まっており、晩婚化は東京などの都市部に限ったことではなく、日本全体の傾向といえます」 しかも、晩婚化は出生率の低下にも影響しているという。 「少子化についての研究では、初婚年齢と結婚後の子供の数に強い関係があるとわかっています。25歳以前に結婚した女性が産む子供の数は平均で2.1人ですが、初婚が35歳を超えると平均1.0人と、大きな差があるのです。こうした結婚に関する行動の変化が重なり、日本の出生率は現在の水準まで低下しました」 つまり、日本の根本的な少子化対策とは、未婚化・晩婚化の対策であり、「子育て支援」ではなく、「結婚の支援」が必要ということになる。 「しかし、それこそが少子化対策の難しさです。独裁国家でもない限り、『若者はみんな結婚しろ』なんて強制することはできないですよね。行政ができる『結婚の支援』は限られています」 つい先日も、東京都が結婚促進事業として独自の「マッチングアプリ」の開発を進めていると報じられた。結婚したくても出会いの少ない男女が"安全にマッチングするためのアプリ"であり、トラブル回避のために個人情報や収入の証明の提出も義務づけるという。 しかし、結婚したくてもできない独身者は、低学歴や非正規雇用などの社会的・経済的な地位の低い人々に圧倒的に多い。その事情はマッチングアプリでも変わらず、低所得者はカップル成立の可能性が一般的に低いとされている。そのため、こういった政策には「税金の無駄遣い」という批判が多く、「そもそも個人の生き方に行政が口出しするのか」という反発も根強い。 「結局のところ、結婚するかどうかは個人の自由であり、私的な領域に行政が関わることに対しては誰しも本能的な違和感があります。だから、岸田政権の『異次元の少子化対策』も子育て世帯の支援に集中せざるをえないのでしょうね」 ■先進国の人口減少はもう止められない!