「少子化対策」で人口減少は止まらない! 日本国民が"本来の目的"を誤解する理由
では、日本以外の諸外国はどうなっているのだろうか。 「人口が増えも減りもせず現状維持できる出生率を『人口置換水準』といいます。日本の場合は2.07で、昨年の出生率は1.20なので、かなり下回っています。でも実は、ほとんどの先進国がこの水準を下回っているんです」 例えば、経済成長が著しい東アジアでは日本以下の出生率の国も目立つ。最近の統計で中国の出生率は1.02。お隣の韓国に至っては、なんと0.72というハイパー少子化社会になっているのだ。 日本より社会福祉が充実しているとされる欧州も現実は厳しい。妊娠期から手厚く親子をケアする公的施設の開設など、子育て支援の先進国として知られるフィンランドの昨年の出生率は1.26。出産や育児に関する給付金の拡充や男性の育児参画の後押しなど、国を挙げた対策で一時は出生率の大幅な回復を遂げたフランスでさえも1.68。どちらの国も戦後最低水準の数値となった。 「しかし、こうした『少子化対策の不調』を『人口減少対策の失敗』ととらえるのは早計です。そもそも少子化を改善しても、人口減少は止まりません」 どういうことか? 「前述したように、日本の場合は2.07の出生率が人口維持に必要です。しかし、奇跡的に出生率がこの水準まで増加したとしても、向こう半世紀以上、人口は減少し続けることが統計上決定しています。これは諸外国も同様で、人口減少は先進国にとって不可避の課題であると認識されています。 労働力不足や社会保障費負担の増加など、人口減少が問題を引き起こすことは事実です。しかし、これは少子化とは別の問題です。移民の受け入れ検討や社会保障制度の見直しなどでも対策はできるはずです。 特に日本では『少子化』と『人口減少』という別個の問題がセットで扱われ、少子化対策こそが人口減少の特効薬かのように扱われていますが、これは間違った見方です」 それでは、少子化対策の本来の目的とはなんだろうか? 「少子化対策の主目的とは、『個々人の自由な選択を支援する』ことです。結婚したくてもできない、子供が持ちたくても持てないという状況は不幸なことであり、社会的に重要な課題です。この解決のために支援するのであり、『みんなが結婚しないと困る』からするのではない。ここが日本で誤解されているポイントです。 実際、欧州では日本のような支援策を『少子化対策』とは呼ばず、『家族支援』や『家庭と仕事の両立支援』と呼ぶのが主流です。誰にとっても生きやすい社会をつくることができれば、結果的に少子化対策にもなるということです。 日本では、こうしたメッセージがほぼ発信されていません。そのため、『またバラマキ政策か』とか『子育て世帯だけを優遇するのか』といった批判が噴出するのです」 ■最も効果的な少子化対策とは?