<感恩報謝・’22センバツ星稜>/4 エース好投、打線奮起 /石川
「ゲームを作り、ピンチでも動じずに抑える。『エースとはこういうものだぞ』ということを学んだ」。星稜の主戦、マーガード真偉輝キアン投手(2年)は前チームのエース、野口練さん(3年)についてそう話す。2020年夏の甲子園高校野球交流試合に登板し、テンポのいい投球で5回1失点と好投。昨夏の石川大会でも初戦で11奪三振で完封するなどチームを引っ張った野口さんから背番号「1」を引き継いだ右腕は、北信越大会準々決勝の日本文理(新潟)戦でエースとしての真価を問われることになる。 相手は好投手を擁し、ロースコアの接戦が予想された。試合は両チームのエースがスコアボードに「0」を刻んでいく展開となる。 マーガード投手は「今までの自分なら力んでスピードを出そうとしただろう」と振り返る。だがこの日は切れのある変化球とコースを突く丁寧な投球で相手打線を抑える。夏から走り込みなどで体力作りに励み、投球フォームも見直した結果、球速が上昇。変化球の精度も高まっていた。 マスクをかぶる佐々木優太主将(2年)はボールを受けながら成長を実感していた。「夏は打たれるとすぐ怒っていたが、北信越大会ではピンチでも冷静に抑え、仲間のミスも笑って受け入れるようになった」と振り返る。林和成監督も「自分が投手陣を引っ張らないといけないという自覚が出たのだろう」と分析する。 エースの好投に打線も応える。五回、津沢泰成選手(2年)の二塁打で1点を先制すると、佐々木主将のスクイズで2点目を挙げる。佐々木主将は八回には二塁打を放って試合を決める追加点へのきっかけを作り、エースを支えた。マーガード投手は最後まで崩れず完投。3―1で相手を降した。林監督は「これ以上ない勝ち方だった」と喜んだ。 続く準決勝の富山商(富山)戦で再び先発したマーガード投手は自身最速タイの141キロをマーク。終盤に1点差まで迫られたが粘りの投球で完投し、チームは甲子園へ大きく前進した。 敦賀気比(福井)との決勝では打線が11安打を放ちながらも攻めきれず、守備の乱れもあって0―6で敗北。準優勝によりセンバツ出場をほぼ確実にしたが、甲子園に向けた課題が見えた敗戦だった。 × × 北信越大会を終えた選手たちは早速、守備の強化に取り組み、冬に入ると室内練習場での打ち込みや体力トレーニングを地道に続けた。林監督は「全国で戦うレベルまではまだまだだと感じた。全体的な底上げが冬の一つのテーマになった」と語る。年が明け、体も一回り大きくなった選手たちはセンバツ出場校を決める選考委員会の日を待った。