新型レクサスLBX MORIZO RRは、ホットハッチの新提案か? ブランド初のMTモデルは想像以上にオモシロかった!
レクサスの新型「LBX」に追加される「MORIZO RR」は刺激的な1台だった! サトータケシがプロトタイプの印象をリポートする。 【写真を見る】新型レクサスLBX MORIZO RRの全貌(75枚)専用パーツを徹底チェック!
ドライバーとクルマが対等の関係
今年1月におこなわれた「東京オートサロン2024」で披露されたレクサスLBX MORIZO RRのプロトタイプの試乗会が、袖ケ浦フォレストレースウェイ(千葉県)で開催された。 車名からもわかるように、モリゾウさん(トヨタ自動車の豊田章男会長)直轄のプロジェクトで、レーシングドライバーの佐々木雅弘と共に走りを磨いたモデルだという。 まずは6MT仕様に試乗、ヒップポイントがノーマルより低くしたというドライバーズシートに収まる。 最高出力304psと最大トルク400Nmを発生する1.6リッター直列3気筒ガソリンターボエンジンと6MTを組み合わせたパワートレインは、進化型「GRヤリス」と共通。つまりレクサスブランドとして初めて、GRファクトリーと共同開発したモデルということになる。 スターターボタンを押してG16E-GTS型エンジンを始動。クラッチは相応の踏み応えがあるけれど、信頼感につながる重さだ。シフトレバーのフィーリングを確かめると、東西南北どの方向に動かしても、節度はあるけれど引っかかりはないという好ましいもの。クラッチのミートポイントも絶妙でわかりやすい。 高段位の柔道選手は組み合った瞬間に相手の力量がわかるというけれど、このクルマも1速に入れてクラッチをミートした瞬間に、鍛え抜かれていることが伝わってくる。 走り出して真っ先に感じたのが、1.6リッター直3エンジンの吹け上がりの良さだ。3000から3500、3500から4000と、回転を積み上げるごとにタコメーターの針が上昇する勢いが鋭くなり、ヌケのよい乾いた排気音がいい感じで空気を振動させる。頭の中に、“ホットハッチ”という懐かしい言葉が浮かぶ。 第1コーナーでは、ターンインの身軽さに感心する。ステアリングホイールを握っている者の実感としては、力ずくで無理矢理クルマを曲げるのではなく、クルマが行きたい方向へ進むように、クルマと会話をしながら力を合わせて向きを変えている感覚だ。 フルタイム4駆システムが、ターンイン、旋回中、そしてコーナーからの脱出と、場面に応じて前後のトルク配分をきめ細やかに調整していることが、コーナリング中の軽快感と安定感を両立させている理由のひとつだろう。 運転に慣れてきたところで、VSCをオフにする。 残念ながら豪快にドリフトを決めてコーナーを駆け抜けるほどの技量は持ち合わせていないけれど、それでもコーナーでキュッとお尻をすべらせて向きを変える楽しさは、十二分に堪能できる。クルマに乗せられているのではなく、ドライバーとクルマが対等の関係にあると感じられるのがうれしい。 続いて8段AT仕様に乗り換える。正直、6MTほど楽しくはないだろうと思っていたけれど、予想は覆された。 変速が素早くてショックも少ないうえに、エンジンとの連携もよく練られているから、パドルシフトを操作しなくてもアクセルペダルの踏み加減ひとつで、適切なギアを選んでくれる。 「NORMAL」から「SPORT」にドライブモードを切り替えると、シフトスピードがさらに上がると同時に、エンジン回転も高まり、常にパワーバンドを維持するセッティングになる。 VSCをオフにすると、“レーシィ”という表現を使いたくなるほど、エグゾーストサウンドが賑やかになる。特にアクセルペダルをオフにした瞬間の「パパンッ!」という音がレーシングマシンっぽくて、背筋がぞくぞくする。今は昔、トヨタ「カリーナ」のコマーシャルには“足のいいやつ”というキャッチコピーが使われたけれど、MORIZO RRは“音のいいやつ”だ。 パドルシフトを操作しながら、両手でステアリングホイールを操れるのが2ペダルの利点。特にクローズドのコースでちょっとお尻をすべらせるような走り方をすると、MTよりも両手でハンドルを扱えるATのほうが楽しいかも……と、思わされた。