「中国の激安製品」お断りの国が続々と…切り札なき中国経済に聞こえ始めた「崩壊の足音」
外需の取り込みが難しくなる
不動産バブル崩壊後、中国政府は産業補助金や土地の低価格供与などを行い、国有・国営企業などの投資・生産を増やそうとした。輸出競争力を高め、大手国有企業などの世界シェア拡大を目指したのだ。2022年4月以降、ドルに対して人民元の下落傾向が鮮明化し、輸出にもドライブがかかる。本年8月ごろまで輸出は景気を下支えの役割を果たした。 しかし、9月の輸出は、8月の前年同月比8.7%増から同2.4%増に鈍化。米欧などとの通商摩擦などで、外需の取り込みも難しくなりつつあるようだ。 9月、米国は中国製品に対する関税率を引き上げた。EVは100%、太陽光パネルは50%、鉄鋼、アルミニウム、EVのバッテリー、主要鉱物などに25%などの追加関税を発行した。2025年、米国は中国製半導体に50%の関税を課す。 欧州委員会もEVなどの分野で対中関税を引き上げ、新興国でも中国のダンピング輸出に対する批判は増加傾向だ。中国の企業は関税を回避するために、最終消費者の現地での事業展開を増やそうとしている。 一方、現地の政府は安値攻勢から自国企業を守るため、中国企業の進出を阻止しようとし始めた。 インドネシア政府は、中国のEC大手の拼多多(ピンドゥオドゥオ)傘下の“Temu(テム)”の事業開始を認めていない。米国ではフロリダ州などが、中国人や中国企業による土地売買を制限し始めた。経済安全保障の観点から、中国企業に対する規制は増加傾向だ。 今後、中国が安価な財の過剰生産能力を増やし、外需を取り込むことは難しくなるだろう。 つづく記事〈「売れ残りタワマン6000万戸」という中国の悪夢…大迷走の中国経済を待ち受ける「“失われた30年超”の暗黒期」〉では、崖っぷち状態にある中国経済の問題点をさらに解説する。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)