センバツ2022 広島商、2回戦辞退 コロナ陽性 無念、夏に晴らす /広島
広島商が思わぬ形で「全国制覇」の夢を断たれた。第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)で、複数の新型コロナウイルス感染を理由に2回戦を辞退した。初戦で20年ぶりの甲子園勝利を挙げ、目標に向けて大阪桐蔭との2回戦を翌日に控えていたが、チーム関係者は無念の思いややりきれなさをにじませつつ、「夏こそ」の思いを口した。【池田一生、根本佳奈】 大会前から対策を徹底していただけに、悔しい結果となった。選手たちは屋外で間隔を取り、走塁など激しい運動以外はマスクを着けて練習するなど、十分に感染予防に努めた。県内にまん延防止等重点措置が適用中の1月から2月中旬までは、休日は部活動を休止し、選手たちは自宅で自主練習に励んだ。3月に入っても対外試合が解禁された5日と6日に予定していた練習試合をキャンセルせざるを得ず、実戦感覚を磨く場も削られた。 そんな逆境でも荒谷忠勝監督が常に口にしてきた「勝つための良い準備」を積み重ねてきた選手たちの努力は23日の1回戦で花開いた。丹生(にゅう)(福井)相手に打線は16安打を放って22―7と大勝し、大正、昭和、平成、令和の4元号勝利を達成。1916年夏の初戦で挙げた19点を上回り、同校の春夏通じての最多得点記録も106年ぶりに塗り替え、創部123年の長い歴史に新たなページを加えた。 2020年夏の広島大会中止も経験している荒谷監督。1回戦の試合終了後のインタビューで開口一番話したのは「無事に大会が開催されたことに感謝しながら試合に臨んだ」という言葉だった。植松幹太主将(3年)は丹生戦後「次の試合に向けて練習し、序盤の守備など課題を減らしていきたい」と意気込んでいた。 しかし、大会本部によると、1回戦後のPCR検査の結果、相次いで陽性が判明したという。 ◇「選手に感謝」関係者ら 栗田正弘校長はオンラインで行われた記者会見で「生徒の健康面配慮や感染拡大防止などから決断した。させたくない経験をさせて心苦しい。これまで以上に温かく生徒を見守りたい」と話した。野球部保護者会長の三戸治郎さん(50)は「1回戦で20年ぶりに甲子園で校歌を歌わせてもらい、選手たちに感謝している。強豪相手に力試しをできる組み合わせだっただけに、試合をさせてあげたかった。残念だ。この悔しさを夏への糧にしてほしい」と話した。PTA会長の伊藤幹(たかし)さん(45)は「まずはしっかり体調と気持ちを整えてほしい。1回勝てたので、胸を張って帰ってきてもらいたい」と思いやった。