<甲子園交流試合・2020センバツ32校>明徳義塾6-5鳥取城北 巧者・明徳、仕留める力 4番、九回2死劇的打
◇第1日(10日・阪神甲子園球場) 終盤に粘った明徳義塾が逆転サヨナラ勝ち。八回に米崎の中前適時打などで2点を返し、1点差の九回2死一、二塁から4番・新沢が右越えに逆転の2点三塁打を放った。鳥取城北は先発・松村が6回を8四死球で2失点ながら無安打投球。八回は河西の2点二塁打など3連続長短打で計4点を奪いリードしたが、継投が実らなかった。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら <明徳義塾6-5鳥取城北> 鋭い打球が右翼手の頭上を越えていった。明徳義塾の4番・新沢が放った逆転のサヨナラ三塁打。「最後にチャンスが来ると信じていた」。集まったナインにもみくちゃにされ、勝利の喜びを分かち合った。 1点を追う九回2死一、二塁の場面で打席に立つと、鳥取城北はこの回から登板した3番手右腕・中川に代わり、2番手で登板した背番号「1」の左腕・阪上をマウンドに戻した。不利とされる左対左の対決にも、新沢はむしろ歓迎だった。「前の打席でもヒットを打っていた。絶対に打てる」。初球の外の変化球を余裕をもって見逃すと、鳥取城北の捕手・安保は「外への厳しい直球で様子見」とサインを出した。これが真ん中高めに甘く入ったところを、勝負強さが売りの4番が逃すはずもなかった。 七回まで無安打に抑えられる苦しい試合だった。鳥取城北の先発を阪上と想定して対策を練ってきたが、登板したのは右腕の松村。「直球に押されて打ちにくかった」。ようやく代わった阪上から、八回に自身の左前打を足掛かりに2点を奪い、九回の逆転劇につなげた。 スタンドに座ったのは控え選手や保護者らに限られたが、「打席での拍手が後押ししてくれた」と新沢。昨秋の四国大会から背番号3を背負い、チームトップの打率4割5分8厘をマークした好打者が、最後の夏を最高の試合で締めくくった。【伝田賢史】 ◇磨いた足、信じてかける 奥野翔琉(かける)中堅手(明徳義塾・3年) 打球が左翼手の定位置付近に上がったのを確認すると、明徳義塾の奥野は「自分の足を信じた」。同点の五回1死三塁。すぐに戻って三塁ベースに白色のスパイクを付けた。捕球とともに一気に加速。頭から滑り込んで雄たけびを上げた。「試合前のシートノックを見て、(左翼手の)送球が安定していなかった。肩も強くなかった」。50メートル5秒7の俊足、冷静な分析力で得点を生み出した。 京都府舞鶴市で過ごした小学生の頃から足がめっぽう速かった。鬼ごっこを始めると、友達から「すぐに捕まるから鬼をやらんといて」と、NGが出たほど。「高校でも足で生き残れたら」と磨きをかけ、昨秋からリードオフマンの座を勝ち取った。 だが、独自大会ではパワーがついたことによる長打狙いが裏目に出た。思うようにチームに貢献できず、準優勝に終わった。「自分勝手な打撃だった」と反省し、最後の試合では原点に回帰した。 この日は四死球で4度出塁し、2度生還した。「安打は出なかったが、本塁を踏めたのでうれしかった」。縦じまの線が見えないほど真っ黒に染まったユニホーム姿で白い歯を見せた。【安田光高】 ◇快打・鳥取城北、手拍子で活気 河西威飛(いぶき)左翼手(鳥取城北・3年) パン、パン、パン――。1点を追う八回1死満塁、鳥取城北の河西は三塁側の味方スタンドから大きな手拍子で激励された。気持ちが高ぶり、心の中で一緒にリズムを取っていた3球目。外角の直球を右中間へはじき返して2走者を迎え入れ、逆転に成功すると、二塁塁上でガッツポーズをスタンドに向けた。 交流試合では、甲子園名物のアルプススタンドの大声援がない。入場が認められた控え部員や保護者は大声を出さず、拍手で応援することが基本だ。準優勝した鳥取の独自大会でもなかった手拍子は、八回の好機に初めてベンチに入れなかった部員約100人らを中心に自然と湧いた。「彼らがいてくれて、このチームが成り立っている。応援してくれていると感じて、すごく力になった」。いつものブラスバンドとはひと味違う、力強い後押しに奮い立った。 最後は左翼から右翼に回った自身の頭をサヨナラ打が越えていくショックな幕切れだったが、試合後も補助員の選手に「ありがとう」と感謝の気持ちを繰り返し伝えていた。「負けて悔しいですが、すごく楽しかった」。待ち望んだ舞台で力を出し切ったすがすがしい笑顔だった。【吉見裕都】 ……………………………………………………………………………………………………… △午後1時3分開始 鳥取城北(鳥取) 100000040=5 010010022=6 明徳義塾(高知)