五十肩・四十肩の治療法を医師が解説 腕が上がらない・肩が痛い症状の治し方

「年齢のせいか肩が上がらなくなった」という悩みを抱えている人は、意外と多いのではないでしょうか。股関節や膝関節と比べて可動範囲が大きく、日常生活動作でもたくさんの動きを担う肩関節ですが、五十肩や四十肩とは具体的にどういった状態なのでしょうか。今回は五十肩（四十肩）の症状や治療法について、「うなやま整形外科」の宇南山先生に伺いました。 ［この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております］

五十肩の原因や四十肩との違いを医師が解説 腕が上がらない症状や肩の痛みを放置して自然に治ることはある?

編集部： 五十肩について教えてください。 宇南山先生： 五十肩は正式名称ではなく、一般的には肩の痛みや運動制限からなる、中高年によくみられる肩の疾患の総称です。多くの場合、「肩関節周囲炎」という病態を呈しています。 編集部： 四十肩とは違うのですか？ 宇南山先生： どちらも正式な疾患名ではなく、定義も曖昧です。基本的に四十肩と五十肩は、ほぼ同じ病態と考えていいと思います。 編集部： 五十肩になると、どのような症状が出ますか？ 宇南山先生： 肩の痛みや肩関節の運動制限が代表的です。初期の痛みは関節の運動時のみですが、徐々に安静にしていても痛みを感じるようになります。運動制限も最初は「肩を捻るような動きのときだけ」など限定的だったのが、徐々に着替えなどの通常の生活動作にも支障が出てきます。 編集部： 放置するとどうなるのですか？ 宇南山先生： 通常、五十肩の症状は数カ月～数年間続きますが、一定の時期が経過すると自然に改善されることが多いと報告されています。

病院で五十肩はどうやって治療する? 薬物療法から注射・手術・リハビリまで五十肩の治療法や診断基準

編集部： 五十肩にはどのような治療法がありますか？ 宇南山先生： 基本的には安静にしていただくのが一番です。ただし、肩関節の炎症が強い場合には、痛み止めや湿布を処方します。さらに、ステロイド剤やヒアルロン酸の注射をおこなったり、「ハイドロリリース」をしたりします。それでも治療効果が不十分な場合は、徒手授動術という「サイレントマニュピレーション」をおこないます。主に、疼痛が続いて運動制限の改善がない「凍結肩」という状態になった人に対して実施します。 編集部： ハイドロリリースとはなんですか？ 宇南山先生： ハイドロリリースは、エコーで画像確認しながら筋膜に薬液を注入し、筋膜同士を剥がす治療法です。五十肩の人は肩を動かす筋肉（腱板）と、その外側にある三角筋という筋肉の筋膜同士がへばりついて、痛みや運動制限を引き起こしていることが多いのです。筋膜を剝がして筋肉の動きを改善することで、疼痛や運動制限の解消を目指します。 編集部： それだけで痛みが楽になるのは嬉しいですね。 宇南山先生： ただし、ハイドロリリースで一時的に痛みが消失しても、生活習慣や身体の使い方が変わらなければ、また筋膜がくっついてしまう可能性もあります。効果を持続させるためには、運動療法との併用で筋肉をつけ、正しい姿勢を保持するようにしましょう。当院では、ハイドロリリース後も生活環境や動作のアドバイス、理学療法士による運動療法などをしています。 編集部： 正しい姿勢とは、どんなところに気をつけたらいいでしょうか？ 宇南山先生： 腕を真っすぐに下ろしたいわゆる「気をつけ」の姿勢は、腕の重みで肩に大きな負担がかかります。腕の重さは、片方の腕が体重の6％と言われています。 例えば65kgの人の場合、約4kgの荷物を肩から下げていることと同じです。脇を少し開いて肘を曲げる姿勢を取ることで、肩への負担を軽減することができます。