相次ぐ中国の凶悪事件、駐在員の安全「懸念」7割超 中国離れが定着 主要企業アンケート
産経新聞社は昨年11月中旬から12月上旬、主要企業111社を対象にアンケートを実施した。 【一覧でみる】アンケート回答に協力した主要企業111社 その中で、中国・深圳で昨年9月に発生した日本人児童刺殺事件などを受け、在中国駐在員やその家族の安全に「懸念」を示した企業が7割を超えた。希望者の一時帰国を含む具体的な安全対策をとった企業も6割以上に達し、現地の邦人社会で不安が消えない状況が浮き彫りになった。 中国では日本人児童刺殺事件のほか、昨年6月にも日本人親子が襲われ、けがをする事件が発生。中国人らが被害を受けた無差別殺傷事件も相次いだ。 企業に駐在員や家族の安全について尋ねると、「懸念している」が42・3%で最多。続いて「やや懸念」が17・1%、「かなり懸念」も14・4%で、懸念を示した企業は合計で7割を超えた。 治安悪化の背景に経済不況や反日感情が指摘される。 具体的な安全対策をとっている企業は64・0%で、複数社が「会社負担による帯同家族の一時帰国を認める」(金融業、製造業など)と回答。「台湾問題を巡る政情不安を踏まえ、新たな赴任者は家族の帯同を保留している」(製造業)との回答も見られた。 経済回復を占う重要な指標の一つである不動産市況は底が見えず、中国経済の今後の見通しは「やや悪化する」(43・2%)「悪化する」(5・4%)が5割近くを占め、「変わらない」も18・0%に上った。「やや改善する」との楽観的な見方は6・3%にとどまった。 トヨタ自動車は上海で電気自動車(EV)を生産する新工場を2027年ごろの稼働を目指し建設する方向だ。だが、日本企業や海外企業の撤退や縮小は相次いでおり、中国離れについては「さらに進む」「やや進む」で昨年夏の前回調査から微増の計53・1%だった。ただ、内訳で「さらに進む」は前回より約9%も伸びており、中国離れの流れが加速するとの見方が広がっている。 一方、中国政府の支援のもと、過剰生産された電気自動車や鉄鋼などを不当に安価で輸出していることが、欧米諸国との貿易摩擦につながっている問題について「やや長期化する」が37・8%、「長期化する」も24・3%と、厳しい見方が多数を占めた。「長期化しない」は0%だった。