「自分にハンデがあるとは思わなかった」──「耳の聞こえないデザイナー」がつなぐ、ろうの世界と聴の世界
直樹さんは聞こえる友だちとじゃれ合って育ち、次第にろう者としての自分を確立していった。今は、デザイナーの仕事のほかに、学生時代の友人と立ち上げた「ろうちょ~会」のメンバーとして、ろう者と聴者が一緒に楽しむイベントを定期的に企画する。 「ろうちょ~会では、聞こえる人が聞こえない人をサポートするのではなくて、お互いが心地いい関係をつくりたいと思っています。聞こえる人たちはたぶん、どうやって関わればいいのかがわからないんだと思うんです。聞こえない人という存在がよくわからないために、ちょっと差別的な気持ちをもってしまうこともあるかもしれない。だから、知ってもらいたい。ろう者のほうも、聞こえないことをマイナスだととらえたり、無理に健聴者に合わせたりするのではなく、ろう者と聴者が対等に、一緒に活動できるようになればいいなと思います」
--- 長瀬千雅(ながせ・ちか) 1972年、名古屋市生まれ。編集者、ライター。