執念の同点ゴールが呼び込んだ大逆転での日本一。G大阪ユースのキャプテン、MF古河幹太が西が丘の夜空に掲げた優勝カップ
[7.31 クラブユース選手権(U-18)決勝 川崎F U-18 2-3 G大阪ユース 味フィ西] 【動画】広瀬すずさんが日本代表ユニ姿で見事なヘディング「可愛すぎる」「さすがの動き」 責任は強く感じていた。先制したものの、逆転を許す苦しい展開。マークすべきフォワードに目の前でゴールを叩き込まれた光景が、頭の中から離れない。ただ、前を向く。もうやるしかない。絶対に自分が取り返してやる。勝つのはオレたち、青黒だ。 「『絶対自分のところに来い!』と思っていましたし、キーパーも上がってきていたので、そこにみんな集中していた中で、ちょうど良いボールが来たので、あとは頭で決めるだけでした。もう信じられなかったですね」。 個性派揃いのチームをしなやかに束ねてきた、ガンバ大阪ユース(関西1)の頼れるキャプテン。MF古河幹太(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)が執念でねじ込んだヘディングが、奇跡的な大逆転での日本一を強い意志とともに呼び込んだ。 「僕は正直『もう試合できないかな』って。遅れてもあるとは言われていたんですけど、『ないんちゃうかな』とか『延期にしてくれよ』とか、いろいろな想いがありました。でも、試合をやるとなってからは、同点でも優勝というレギュレーションやったんですけど、『絶対勝って優勝したい』と全員が思っていたので、みんな試合の直前には気持ちができていたと思います」。 古河はチームメイトたちを頼もしく感じていた。当初の予定より2時間15分遅れでキックオフされることとなったクラブユース選手権決勝。川崎フロンターレU-18(関東4)との一戦は40分1本勝負となったが、G大阪ユースの選手たちはモチベーション高く、ピッチへと向かっていく。 40分間にすべてを注ぎ込む決戦は、お互いがフルスロットルでぶつかり合う。19分。G大阪ユースが先制。24分。川崎F U-18が同点に追い付く。そして29分。川崎F U-18が逆転する。「クロスの時に自分のいるべきポジションが見えていなくて、一瞬マークを外してしまって、それで決められたので責任を感じていました」(古河)。1-2。残された時間は10分あまり。大会連覇を狙っていたG大阪ユースは、追い込まれる。 もう時間はアディショナルタイムに入っていた。40+2分。右サイドでG大阪ユースはCKを獲得する。GKの荒木琉偉(2年)も上がってくるスクランブル状態の中で、古河は冷静に自分の入り込むべきポイントを見極めていた。 MF山本天翔(2年)が左足で蹴った軌道は、宙を舞った荒木の上を越えると、迷いなくその位置に走り込んでいた背番号5へ届く。叩いたヘディング。揺れたゴールネット。キャプテンの汚名返上の一撃で、ピッチもゴール裏も喜びが爆発する。 「もうアディショナルタイムだったと思うんですけど、みんな諦めていなかったですし、勝ちたいという想いを持っていたので、それが良い形でゴールに繋がったのかなって。みんなの気持ちが乗った感じでした」。 土壇場で生き返った青黒はもう止まらない。40+6分。山本の直接FKがゴールを陥れると、程なくしてタイムアップのホイッスルが聞こえてくる。「もう何も考えられないぐらい、凄く嬉しかったです。自分はキャプテンをやってきたので、ずっと『チームを勝たせたい』と思っていましたし、とにかく嬉しかったですね」。G大阪ユースは超劇的に夏の全国連覇を達成してみせた。 この大会が始まる前から、古河も結果への重圧は感じていたそうだ。「正直、グループステージの前は2連覇というプレッシャーもある中で、『本当に行けるかな』とか、不安な気持ちも少しはありましたね」。ただ、実際に試合を重ねるごとに、チームが纏っていく一体感もハッキリと実感していた。 「やってみたら無失点が続きましたし、ゼロで守っていたら攻撃もポンポン点を獲ってくれるので、守備と攻撃の信頼関係が生まれていって、守備陣が自分たちの仕事をまっとうしたら、攻撃陣が決めて勝てるというのがわかったので、一緒に守っていた1年生の横井(佑弥)とか、キーパーの荒木も自然と僕の意識に引っ張られて、『絶対に死ぬ気で守ってやろう』という気持ちが出ていたのかなと思います」。 決勝前日。優勝カップを掲げるイメージは、少しだけ膨らませていたという。「昨日の夜とかから、やっぱりちょっとは想像するじゃないですか(笑)。目先のことに集中しないと足元をすくわれますし、でも、考えてしまいますよね」。17歳の素直な告白が微笑ましい。 イメージ通りにできたかを尋ねると、笑顔のキャプテンはこう返してくれた。「まだ映像を見れてないのでわからないですけど(笑)、もう何も考えずに、思いっきり上に上げようという感じでした。凄く嬉しかったですね」。 みんなで勝ち獲った大会連覇。自分たちの代でもぎ取った日本一。最高の輝きを放った優勝カップは、黄色いキャプテンマークを巻いた古河幹太の両腕によって、雨上がりの西が丘の夜空へと力強く掲げられた。 (取材・文 土屋雅史)
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