偏差値71の進学校でも「大学へは進学せず」令和の秀才球児・森井翔太郎が渡米挑戦前に語った言葉
卒業後、即渡米。令和の秀才球児に、従来の日本的価値観は通用しない。失敗なんて、考えてたまるか。道なき道を切り拓く、森井翔太郎17歳。決断への過程、メジャー挑戦前の心境を語りつくした。 【写真】世界が驚愕…シブコの鍛え上げられた 「圧巻ボディ」奇跡のショット! 取材・文 加藤弘士 スポーツ報知編集委員/'74年、茨城県生まれ。'97年に報知新聞入社後、アマチュア野球、巨人、西武などの担当記者を経て、現在スポーツ報知編集委員。著書に『慶應高校野球部』(新潮新書)など 前編記事『「偏差値71の進学校」から「即メジャーリーグ挑戦」へ…!令和の秀才球児・森井翔太郎はなぜ前人未踏の地を進むのか』より続く。
常識外れと言われても
翌8日に野球部の仲間とバーベキューを楽しむと、9日から森井はトレーニングを再開。進路について熟考を重ね、9月上旬には家族で渡米。6日間の視察ではメジャー、1Aの試合を観戦し、米大学の施設を視察した。下した結論は「直接メジャー挑戦」。迷いはなかった。 メジャー球団とマイナー契約を結んだ場合、まずはルーキーリーグからスタートする。その後1Aからステップアップし、2Aを経て3Aで活躍できればメジャー昇格の可能性は高まる。常識的には日本球界を経てからのメジャー挑戦が一般的だ。なぜ道なき道を選んだのか。私の問いに、いい表情で言った。 「従来の価値観にとらわれたくない。先入観は全部取っ払って、自分が一番やりたいこと……人生において、何をやったら一番幸せなのかを何度も考えたんです。 メジャーに直接行くのは、前例がない。でもそれは自分にとってあまり関係がなくて。本当にやりたいことを信じてやっていきたい。自分が一番行きたいのはメジャーリーグ。それはずっと変わっていません」
失敗は考えない
力みがない。どこまでも自然体だ。過去、高校野球の強豪校のスター選手の中には「甲子園に行けなきゃ終わり」といった、ある種の悲壮感を伴う若者もいた。それとは対極的な姿に映る。 道なき道のリスクを考えた時、国内の名門大学やプロに進めば、ある種のレール……成功への道程が見えるのも確かだ。だが森井は、爽やかに答えた。 「失敗したらどうしようというのは、なるべく考えないようにしています。失敗を考えていると、そっちの未来を引き寄せてしまう。たとえ失敗したとしても、英語は身に付くし、NPBより厳しい環境で野球をやったことは、自分の人生にとってプラスになる。『絶対失敗しないぞ』とガチガチになるよりは、『失敗してもここまでやったんだから』と思えるぐらいの練習をしたいと思っています」 前代未聞の挑戦をサポートする田中監督に、森井は「生徒思いの先生です」と感謝する。桐朋では他の進学校にありがちな、進学実績を上げるために生徒の受験先に口を出すようなことは、まずない。それは森井に対しても同様だ。 田中監督は言う。 「森井は特別じゃなく、普通の教え子の一人なんですよ。卒業してサークルで草野球を楽しむ生徒も、バイトを頑張る生徒も、全員が大切な教え子。みんな一緒です。そんな部でありたいんです」 桐朋高校に通う生徒はほとんどが私服だ。自主・自立の証だという。キャンパス内を歩くと、大学のような自由闊達な空気が漂う。そんな教育方針もまた、「前例にとらわれない思考」を後押ししているように感じた。