勝てばV王手の一戦で引き分け…神戸は”大黒柱”大迫勇也がベンチ外で攻撃の形を作れず、その存在の大きさを改めて思い知らされる結果に
◇コラム 大塚浩雄の「C級蹴球講座」 ◇10日 J1リーグ第36節 東京V1―1神戸(味スタ) 優勝争いも大詰めとなった第36節、味スタのベンチから、大迫勇也が消えた。大迫がベンチから外れるのは4月13日に国立競技場で行われた第8節の町田戦以来。34歳のベテランFWは、それ以外の34試合はスタメン31試合、途中出場3試合とすべての試合でピッチに立っている。 今季は11得点。22得点をたたき出し、得点王に輝いた昨季ほどの爆発力はないものの、連覇を狙う神戸の大黒柱であることは間違いない。皮肉なことに、ケガでベンチ外となった東京V戦で、その存在感の大きさを、改めて思い知らされる結果となった。
前半7分、右CKから相手のクリアを胸でトラップした山川は、鮮やかなボレーシュートをたたき込んだ。勝てば優勝に王手がかかる大事な一戦で、神戸が幸先のよい先制点を手にした。しかし、その後は東京Vに主導権を握られ、攻めあぐんだ。そして後半追加時間1分、まさかのオウンゴールで引き分け。広島が敗れたため、残り2節で2位・広島とは勝ち点差3、3位・町田とは同5となった。 ボールを収め、前線で攻撃の起点となる大迫がいない。いつもなら、ある程度アバウトに蹴っても、相手に競り勝って、ボールをキープしてくれるターゲットマンがいなくなったことで、攻撃の厚みを作るための”間”ができない。 大迫が前線でボールを受けてから作り出す1秒、2秒の間が、神戸にとっては大きな意味を持つ。武藤、さらに宮代といったアタッカーが、攻撃に加わるための時間を、大迫が作り出しているのだ。この時間がなくなると、攻撃が単発になり、攻撃に厚みがなくなる。
東京Vの城福監督は「勝ち点1はきょうの手応えからしたら非常に悔しい。今回はもう一度やったら絶対勝ち点3を取れる。そういうふうに思える試合だった。相手がペナ(ペナルティーエリア)の中でシュートを打ったのはあの1失点と、前半の最後にポストに当たったシーン以外は、ペナの中で脚を振らせなかった」と胸を張った。 さらに、神戸がやり方を変えた?という質問に「そうは思っていない。前からプレッシャーにいったら、結局はロングフィードなんですよ。そのやり方は変わっていない」と分析。7人で堅く守ってアタッカー3人がゴールを狙う。しかし、そのロングフィードを攻撃につなげる大迫がいないと、神戸は攻撃の形が作れないのだ。 今季のJ1も残り2節。果たして大迫は復帰できるのか。神戸・吉田監督は「攻撃のところで、もう少し起点ができて、自分たちの時間ができればよかった」とした上で、大迫については「それほど大きなケガではない。今回の試合に出られる状況ではなかった。ギリギリのところを攻めていた」と説明した。 果たして大迫は次節、ピッチに戻ってこれるのか。2試合を残して3チームに優勝の可能性が残された。もしも神戸が2連敗するようなことがあれば…。最後の最後、このドキドキ感がたまらん。 ◆大塚浩雄 東京中日スポーツ編集委員。ドーハの悲劇、94年W杯米国大会、98年W杯フランス大会を現地取材。その後はデスクワークをこなしながら日本代表を追い続け、ついには原稿のネタ作りのため?指導者C級ライセンス取得。40数年前、高校サッカー選手権ベスト16(1回戦突破)
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