【高校サッカー選手権】正智深谷が浦和学院を無失点に封じ8年ぶりV
第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選は11月17日、埼玉スタジアムで決勝が行われ、正智深谷が浦和学院を1-0で下し8年ぶり4度目の栄冠に輝いた。浦和学院は37年ぶりに決勝の舞台に駆け上がったが、2度目の挑戦も実らなかった。 【フォトギャラリー】正智深谷 vs 浦和学院 両チームとも初戦の2回戦を除き、3回戦から準決勝まですべて1点差の競り合いを制してきただけに、ロースコアでの決着が予想された。 最初に先制のチャンスを迎えたのは浦和学院で、前半3分の左CKから惜しいシーンがあった。MF坂間真翔(3年)のキックが混戦となったところで、MF二階堂拓人(3年)がこぼれ球をゴール前に入れた。GK森穂貴(3年)が捕球し損ねたボールを今度はDF秋澤聖(3年)がシュートしたが、相手に当たって枠を捕らえられなかった。 15分には、MF佐藤大心(3年)からFW橋本秀太(3年)を狙った絶妙のスルーパスが届きかけたが、前に出てきたGK森の好判断に阻止された。 正智深谷は前からしつこく重圧を掛けながら、鋭いサイドアタックを展開。前半17分、MF赤川空音(3年)が右サイドから長い距離を運んだ。MF近藤七音(3年)が中央でボールを預かると、左のMF小西聖七(3年)へ完ぺきなスルーパスを送り、小西が強烈な左足シュート。GK岡本悠汰(3年)のクリアから左CKを獲得する。 18分、SB鹿倉颯太(3年)の蹴ったボールがMF大和田悠(3年)に当たり、CB佐藤飛友(3年)がその跳ね返りを打つと相手に触れて先制ゴールが生まれた。やや不運ではあったが、浦和学院にとって今大会5試合目で痛恨の初失点。これが決勝点となった。 前半はともに決定的な場面は少なく、浦和学院のシュートはゼロ。正智深谷のリードで後半を迎えた。後半もシュート数では正智深谷が5本で上回ったが、4本の浦和学院のほうが得点の可能性がある一撃は多かった。 11分、後方からのロングパスを橋本がヘッドで落とすと、坂間を経由してMF平昭一哉(2年)の右クロスから佐藤が決定的なヘディングシュートを放ったが、GK森に捕球された。16分には坂間が完ぺきなスルーパスを橋本に送ったが、ややトラップが大きくなってDFに蹴り出されてしまう。24分には左CKから橋本がヘッドで捕らえたシュートも、枠へ飛ばずに好機を逃した。正智深谷は赤川が右から何度も何度も敵陣に顔を出し、鋭いクロスを配給したのだが、わずかに受け手とタイミングが合わずにシュートまで持ち込めなかった。 追加点こそ奪えなかったが、球際の攻防で激しくファイトし、前線、中盤からのプレスを継続したことで浦和学院を無失点に封じ込んだ。後半のアディショナルタイム3分が終了し、タイムアップの笛が鳴った瞬間、正智深谷が8大会ぶりの王座に返り咲いた。 5試合で14得点・2失点の立派な戦績だった。 60歳の小島時和監督は「浦和学院は守備に自信を持つチームなので、どうやったら(攻略できるのか)と考えていた。うちらしい形からチャンスをつくり、そこからのCKで点を取れたことでいい流れになった」と得意のセットプレーから奪った決勝点を喜んだ。 前回出場した第95回全国高校選手権では、準々決勝で青森山田に敗れたものの初めてベスト8に進んだ。小島監督は「埼玉勢は4強からも遠のいているので、そこまでは責任を持って戦いたい」と、まずは自分たちの最高成績を更新するベスト4を見据えた。 37年ぶり2度目のファイナルに駒を進めた浦和学院だったが、1点に泣いて初優勝に手が届かなかった。それでも就任1年目の川上耕平監督は、「勇気を持って試合を進め、ボールを保持して攻めることができた。こう戦うんだ、といううちらしさを決勝の舞台で見せられたと思う。選手は本当によくやってくれました」と感謝の言葉を送り、イレブンの労をねぎらった。 (写真・文=河野正)