得点王争いで2位浮上の川崎F36歳ベテラン家長昭博が「僕が得点王を獲ったら日本のサッカー界もヤバい」と発言した真意とは?
明治安田生命J1リーグ第29節の8試合が10日に行われ、川崎フロンターレが4-0でサンフレッチェ広島に快勝して2位に浮上した。ホームの等々力陸上競技場に好調の広島を迎えた川崎は、前半34分にFW家長昭博(36)のゴールで先制。後半にも家長の得点王争いの2位タイに浮上する10ゴール目などで3点を追加した。もっとも、ヒーローの家長は試合後に「僕が得点王を獲ったら、日本のサッカー界もヤバいと思う」と発言。その真意とは。
2ゴールを叩き込み今季通算10ゴール
最初に聞いたときはジョークだと思った。 公式戦で8連勝中だった難敵に4-0で快勝し、入れ替わる形で2位に浮上した広島戦後の取材エリア。先制とダメ押しの2ゴールを決めて、2シーズンぶり3度目の2桁得点に到達させた家長に、こんな質問が飛んだ後のやり取りだった。 「得点王というのも見えてきたのでは。実際に意識しているのでしょうか」 大詰めを迎えているJ1の得点王争いは、この日の湘南ベルマーレ戦で1ゴールをあげた清水エスパルスのFWチアゴ・サンタナが11ゴールで単独トップに浮上。10ゴールで家長を含めた3人が、さらに9ゴールで6人が続く大混戦になっていた。 しかし、家長は「いや、ないですよ」と即答。さらにこう続けた。 「優勝するのが、僕がクラブに課せられていることだと思いますし、僕が得点王を獲ったら、日本のサッカー界もヤバいと思うので」 言い終えた瞬間に家長は口元を緩め、わずかに笑みも浮かべている。しかし、元来は寡黙でジョークを言うタイプでもない。案の定、真顔に戻って念を押した。 「それは間違いなく思います。はい」 何を持って「ヤバい」のか。答えは歴代最少スコアを更新しそうな得点王争いと、そのなかに点取り屋ではない家長が上位に名を連ねている状況にあるのかもしれない。 前節まで10ゴールでトップに並んでいた3人のなかに、シーズン途中に鹿島アントラーズからサークル・ブルージュ(ベルギー)へ移籍した関係で、7月以降はJ1のピッチに立っていないFW上田綺世が含まれていた状況がまず尋常ではなかった。 センターフォワード型の選手がなかなかゴール数を伸ばせない今シーズン。現状のペースのままで11月5日の最終節を迎えれば、仲川輝人とマルコス・ジュニオールの両フォワード(ともに横浜F・マリノス)が15ゴールで得点王のタイトルを分け合った、2019シーズンを下回る可能性まで指摘されはじめていた。 対照的に家長は右ウイングを基本ポジションとしながら、ピッチ上のあらゆるエリアに神出鬼没とばかりに顔を出す。困ったときのボールキープからチャンスメイク、そしてフィニッシャーと課される役割も状況によって刻一刻と変わる。 だからこそ、センターフォワードを託される選手たちへの檄を込めて「ヤバい」と言ったとすれば、後半23分に川崎が決めた3点目もうなずける。 ペナルティーエリア内でMF脇坂泰斗が、DF住吉ジェラニレショーンに倒されて獲得したPK。ボールを手にした家長のもとへ、FW知念慶がおもむろに歩み寄った。知念への取材をもとに、2人のやり取りを再現すれば次のようになる。 知念「自分に蹴らせてください」 家長「何でやねん!」 知念「お願いします。マジでお願いします」 家長「ええわ!」 試合中にPKを獲得した場合には、家長がキッカーを託されていた。それを強引に、本人の言葉を借りれば「ゴリ押しして」まで手繰り寄せた知念はゴール右隅へ、相手キーパー大迫敬介がコースを読んでも防げない豪快な弾道を突き刺した。