得点王争いで2位浮上の川崎F36歳ベテラン家長昭博が「僕が得点王を獲ったら日本のサッカー界もヤバい」と発言した真意とは?
ルーキーながら17試合でピッチに立っている佐々木だが、夏場は試合から遠ざかり、広島戦が7試合ぶりの出場だった。その間にベンチ入りしたのも一度だけだが、日々の練習を介してもがき、苦しむ姿を家長は目の当たりにしてきた。 「練習でいつも僕がマークにつかれることが多かったので。本当に下を向くことなくやっているのはマークされてわかっていたので、今日もやってくれると思っていました」 自分に関する質問には必要最低限の言葉で返し、可愛い後輩を含めた仲間たちやチームのことを聞かれればエピソードを添えてたっぷりと答える。もちろん、ピッチ上では誰よりも頼りになり、チームを勝たせる大仕事を表情ひとつ変えずに完遂させる。 高温多湿の夏場の戦いにおいて11試合連続で先発して、そのうち9戦でフル出場。広島戦を含めた他の2試合も後半アディショナルタイムまでプレーし、11試合で実に8つのゴールを量産してきた。あまりにカッコよく、それでいて眩しい背中に、後輩たちからは図らずも同じニュアンスの言葉が飛び出した。 「誰がどう見てもアキさんはスーパーなので」 こう語ったのは知念と、右サイドバックとして家長と縦関係を組む場面が多い日本代表の山根視来。家長へ憧憬の視線を送りながら、2人はこうも語っている。 「でも、アキさんに頼ってばかりじゃいけないと思うので」 完敗とともに3位へ後退した広島のミヒャエル・スキッペ監督は、消化試合数が広島の方が2つも多い状況と相まって、逆転優勝へ実質的な白旗をあげた。 「今日は川崎が勝ちに値するゲームだった。(マリノスを含めた)この2チームは、自分たちよりも力が上だと思っている」 マリノス、川崎ともに残りは7試合。直接対決が終わっている状況で、勝ち点で3ポイント差をつけられ、得失点差でも大きく劣っている川崎は厳しい戦いが続く。それでも家長は、自分に続けとばかりに仲間たちへこんな言葉を残している。 「楽しんでほしいと思います。この緊張感を。それだけですね」 今後は中3日で名古屋グランパスのホーム豊田スタジアムへ、その次は中2日で柏レイソルのホーム三協フロンテア柏スタジアムに乗り込む。36歳の体に蓄積している疲れを認めながら、それでも家長は涼しい表情を浮かべた。 「まあ、試合が始まれば全然問題はないです」 シーズン自己最多となる11ゴールの更新も時間の問題だが、家長にとっては個人記録のすべてが通過点となる。史上2チーム目となる3連覇だけを見すえ、不言実行の精神で後輩たちをけん引しながら、川崎でただ一人、リーグ戦で全27試合に出場している鉄人は一挙手一投足から放たれるいぶし銀の存在感をますます輝かせていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)