得点王争いで2位浮上の川崎F36歳ベテラン家長昭博が「僕が得点王を獲ったら日本のサッカー界もヤバい」と発言した真意とは?
3試合連続ゴールを決めて今シーズンのゴール数を「6」に伸ばし、2019シーズンの5ゴールを上回る自己最多をマークした知念は試合後にこう明かしている。 「アキさん(家長)はちょっと怒っていましたけど、今日はどうしてもゴールを決めたかった。家族が観戦しに来るとゴールできない、というジンクスを打ち破りたくて、何て言うんだろう……エゴイストさを出してPKを譲ってもらいました」 昨シーズンに23ゴールをあげて得点王を獲得し、MVPにも輝いたFWレアンドロ・ダミアンが8月20日のアビスパ福岡戦で右足を負傷。関節外側じん帯損傷と腓骨筋肉離れで全治10週程度と診断され、長期の戦線離脱を余儀なくされた。 ダミアンが務めていたセンターフォワードを、このまま担う可能性もある入団6年目の27歳、知念が試合中に何度も食い下がってきた。理由はどうであれ、川崎の逆転優勝に欠かせない貪欲さを、最後は家長も快く受け入れた。 知念にPKを譲った場面を「蹴りたい、という選手がいたので譲りました」と素っ気なく振り返った家長は、試合直後のフラッシュインタビューで「あと1点取りたかった」と語っている。もちろん、PKの一件が念頭に置かれたわけではなかった。 試合後の取材エリアでは、こんな言葉を紡いでいる。 「個人的には記録はあまり意識していないんですけど、勝つ上で自分が点を取っていかないといけないと思っているし、自然な流れとして今日はチャンスが増えると思っていたので。もう1点ぐらい取れそうな空気があった、という感じですね」 両チームを通じて最多となる5本のシュートのなかには、カウンターから利き足とは逆の右足で放つも大迫にキャッチされた前半19分の一撃や、大迫のファインセーブに阻まれた後半43分の左足によるジャンピングボレーも含まれていた。 自責の念を込めて「あと1点――」と口にした家長だが、広島のゴールネットを揺らした前半34分の先制弾、そしてダメ押しとなる後半33分の4点目も圧巻だった。 先制弾は細かいパス回しで左サイドを崩し、縦へ抜け出した大卒ルーキーの左サイドバック佐々木旭(流通経済大卒)がマイナス方向へ折り返したクロスを、右サイドから中央へ入り込んできた家長が左足でゴール右へ蹴り込んだ。 このとき、知念が中央からニアサイドへ動き、相手のマークを引きつけた結果として中央にポッカリとスペースが生じた。そこを意識した、あうんの呼吸のゴールだったのかと問われた家長は「そうですね。そんな感じです」とだけ答えた。 ダメ押しゴールは再び左サイドを佐々木が突破。ペナルティーエリア内でパスを受けたFWマルシーニョが放ったシュートのこぼれ球を、ノーマークの状態で右サイドにいた家長が再び左足で、豪快な弾道を描かせながら突き刺した。 今シーズン10ゴール目を問われても「感覚と、あとはリラックスして打ったら入るんかなと思って、力を抜いて打ちました」と口数が少なかった家長がおもむろに冗舌になったのは、ゴールに絡んだ佐々木のプレーを問われた直後だった。 「本当に頼もしかったし、プレッシャーもあったと思いますけど、やっぱり彼が悔しい時間を過ごしていたのを見ていたので。チームとして本当に力になりましたし、得点を入れた僕とかよりも彼がよかったと思うので讃えたいし、みなさんもお願いします」