「ジル サンダー」はカオスをノスタルジックに描く 「オニツカタイガー」から黄色が消えた!? 2025年春夏ミラノコレVol.2
スーツが強いけれど、ウィメンズはもう少しデザイン性を高めたりエモくならないと売れないから、今回の見せ方は悪くなかったですよね。ただ、カバンの開け閉めで雰囲気を演出するのは、ちょっぴり反対(笑)。オンとオフの境界線が曖昧になっている様を表現するなら、開閉ではなく、バッグのデザインで表現して欲しかったです。
とはいえ、流れるようなクレープやツイル素材を多用したスプリングコートやジャケット、パンツは素敵でした。暑い中でもちゃんとしたい人々のニーズを叶える今季のリアルトレンドになりそうです。
お次は「フェンディ(FENDI)」の展示会、そして「ヘルノ(HERNO)」でしたね。最近「ヘルノ」はライフスタイルブランドとして、アウターのみならずインナーやボトムス、バッグまで提案。今季はパステルカラーのコレクションが好きだったな。少しハリのある生地のボリュームスカートも、パステルカラーに染めると途端に愛らしい。アイスブルーは、見た目にも涼やかで、これからは「ヘルノ」と春夏シーズンもお付き合いできそうです(笑)。丁寧な手仕事も垣間見えます。
混沌とした時代をノスタルジックに
「ジル サンダー」はバンクーバーに想いを
村上:お次は、「ジル サンダー(JIL SANDER)」。今回は、1970年代のバンクーバーに想いを馳せました。どうやら今に通じる混沌としたカオスな魅力があったそうで、ルーシー(Lucie)&ルーク・メイヤー(Luke Meier)夫妻は、同様にカオスなのに不穏な現代にメッセージを投げかけたかったみたい。
その上で注目したのは、写真家のグレッグ・ジラード(Greg Girard)。カナダ出身ながらキャリアの大半をアジアで過ごし、香港で暮らしたり、沖縄に通ったりしながら、写真集を出版してきたそうです。強い着想源になったのだろう作品は、後半、シルクビスコースのロングベストなどにプリントした、バンクーバーの港に停まっていた車の写真。暗い港の中でアメ車から漏れる光が、現代化が進む中で失われた古き良きものの価値を体現しているような作品です。