日本酒の味の未来を変える!? 「SHUWAN」とはどんな器なのか
ファッションからカルチャー、旅やホテルからガストロノミーまで、ラグジュアリーライフをテーマに執筆活動を行っているコラムニストの中村孝則さんが、毎回1つのテーマのもとに真の“贅沢”をご紹介する連載です。今回のテーマは……。
■ 『天酒堂』の「SHUWAN」
いまの日本酒を最高の味わいで飲むために開発された器「酒碗」については、以前に小欄でご紹介したのでご記憶の読者も多いかと。おさらいも含め簡単に説明すると、時代とともに進化・洗練を極めた現代の日本酒。造り手、そして飲み手の私たち双方にとって、これほど幸せな時代はありません。 しかし、その醍醐味を楽しむには、従来の器、いわゆる“ぐい呑”ではサイズ的に小さく、本来のポテンシャルを存分に引き出せない、という切実な課題に直面しています。かといって、よく流用されるワイングラスでは風味のバランスだけでなく、ほかの器や設えとの相性のミスマッチも起こります。 そこで、トップクラスの酒蔵や現代陶芸作家たちの協力を得て、最適なサイズ感や素材で新ジャンルの酒器として開発されたのが「酒碗」なのです。東京・青山にある専門店「天酒堂」には、現代を代表する陶芸家による、さまざまな「酒碗」が並ぶので、ぜひ立ち寄ってほしいと思います。
進化する日本酒の醍醐味を最大に引き上げるために開発された「SHUWAN」。器に日本酒を半分ほど(90~120㏄)注ぎ使用すると香りと味わいが驚くほどに増幅され、未知の味覚ゾーンが体験可能に。日本を代表する蔵元の意見を聞き、陶芸家の村山健太郎が設計。白い磁器製で手触りや手のひらへの収まりも素晴らしい。3960円/天酒堂
そして、今回ご紹介する「SHUWAN」は、その最終形ともいえる究極の器として開発されました。従来の「酒碗」との違いを端的に申し上げれば、「酒碗」が、作家の造形も含めた器の個性と日本酒の双方を楽しめる趣味的な器であるのに対し、「SHUWAN」は徹底徹尾、機能性に特化した究極の器ということでしょうか。 サイズもコンマ㎜単位で設計され、日本を代表する蔵元の意見を汲み取り、陶芸家の村山健太郎さんが設計したもの。素材は量産可能な白磁で、3960円というロープライスを実現。今後は日本酒のテイスティングの基準になる器を前提にしているところがキモになります。名前も欧文にしたのは、国際的な戦略であると筆者はみております。 リーズナブルなので酒造の現場やワインスクール、もちろん飲食店でも使いやすいのではないでしょうか。もちろん筆者も真っ先に手に入れていますが、手のひらにすっぽり収まる質感もさることながら、めっぽう扱いやすいのもいい。日本酒の魅力を再認識する意味でも、おひとつ常備することを強くオススメいたします。
● 中村孝則(なかむら・たかのり)
コラムニスト。世界各地を独自の視点で読み歩き、さまざまなメディアでラグジュアリーライフを提案。「世界ベストレストラン50」の日本評議委員長も務め世界各地で美食探求の日々を送る。 2024年7月号より ※価格はすべて税込み価格です
文/中村孝則