岡副麻希「奨学金のおかげで自分の世界が広がった」親になった今考える“学びとお金”
奨学金を借りたことは自分にとっていい経験だった
――奨学金は昨年完済されたそうですね。ご自身で返済されたのでしょうか。 岡副麻希: 自分で返済しました。いろんな返済のパターンがあると思いますが、私の中では両親に返してもらうという選択肢はなくて。自分の夢のために東京に行って学ばせてもらったから、絶対に自分が返そうと思っていました。金額的には大変でしたが、自分が完済することによって奨学金制度がどんどん続いていくことを考えると、逆に燃えるというか、使命感がありましたね。 ――奨学金を完済されたときにご自身のSNSでも発信されていましたが、そのときの反響はいかがでしたか。 岡副麻希: 「返済しているように見えなかった」とか「奨学金を返して偉い」とよく言われましたが、そういう声にちょっと違和感はあって。奨学金=借金だから大変、返済が苦しいというネガティブなイメージではなく、奨学金という名前をもっとポジティブなイメージに変えたいくらい、私はプラスに捉えていたんですよね。いろんな事情があると思うんですけど、もっとみんなが奨学金に対してポジティブに考えられたらいいなとすごく感じます。 ――岡副さんは今年5月に第一子を出産されましたが、親の立場になってみて、大学の授業料や奨学金についてどう思いますか。 岡副麻希: 今は東京都が高校の授業料や保育料の無償化に向けて動いてくれていますよね。大学の授業料についても、国がもっと動いてくれたら、奨学金を借りなくても大学に通える人が増えて、親としてもすごくありがたいなと思います。 でも一方で、奨学金を借りたことは、娘にも経験してもらいたいと思うくらい、私にとっていい経験だったんですよ。今すぐ全額無料というのは難しいでしょうし、学びたいけど学べない人を少なくするためにも、現在の奨学金制度がもっと身近に感じられるようになればいいのにと思います。
経済評論家・ファイナンシャルプランナー 横川楓氏の「専門家の目線」
―――現在、奨学金制度を利用している学生はどのくらいいるのでしょうか。 横川楓: 奨学金制度を運営する日本学生支援機構が行った学生生活調査(令和4年度)によると、奨学金を受給している学生の割合は、大学の昼間部で55%、短期大学の中間部で61.5%、大学院の修士課程で51.0%、大学院の博士課程で58.9%という結果になりました。つまり、2人に1人以上が奨学金制度を利用しており、奨学金を受給することは珍しいことではなくなっています。 それでもなお奨学金に対してネガティブな声が多いのは、奨学金を借りたあとの具体的な想像がついていないことが原因だと考えられます。実際に学生さんにお話を聞くと「親に言われたから借りた」という人も多く、当事者意識があまりない印象です。そもそも返還義務があることや、金額や返還期間・返還方法について知識が不足しているために「借りた多額のお金を返さなければいけない」というイメージが先行してしまうのだと思います。 事実、奨学金を借りた学生が返還義務を知った時期について調査した結果によると、延滞なく返還している人の中で「申し込み手続きを行う前」と回答したのが89.1%に対して、返還を延滞している人では56.2%と約30%もの差があり、延滞してしまう方は奨学金制度への認識が十分でないことがうかがえます。その点で、岡副さんは奨学金を自分ごととして捉えているからこそポジティブな言葉につながるのだと感じました。 ―――奨学金制度を利用する前に、当事者である学生とその親の立場でそれぞれ心がけておくべきことはありますか。 横川楓: 奨学金を返還する当事者となる学生さんは、まず制度についてしっかりと理解することが大切です。今は返還が不要な給付型の奨学金や企業独自の奨学金など、奨学金にもさまざまな種類があります。返還期限の猶予制度や減額制度などもあるので、あわせて調べてみましょう。 また、親御さんはご自身だけではなく、お子さんと一緒に奨学金制度を理解することが大切です。そして「借りた奨学金を返還していくのはお子さん自身」ということをしっかりと話す責任が大人にあります。日本学生支援機構のウェブサイトには奨学金の返済シミュレーションが用意されているので、そういったものを活用しながら親子で一緒に考えてみてはいかがでしょうか。 ----- 岡副麻希 1992年、大阪府生まれ。早稲田大学在学中に芸能事務所に所属し、現役女子大生キャスターとしてデビュー。「めざましどようび」「めざましテレビ」(フジテレビ)などのキャスターとして活躍。2022年、レーシングドライバーの蒲生尚弥さんと結婚し、2024年5月、第一子を出産した。 横川楓 1990年生まれ。明治大学法学部卒。経営学修士(MBA)、AFPなどを取得し、現在はやさしいお金の専門家・金融教育活動家として活動。「誰よりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーにお金の知識を啓蒙、金融教育普及に尽力している。2022年1月には一般社団法人金融教育推進協会を設立、代表理事となる。 文:稲垣恵美 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)